干しシイタケの活用と注意点
骨粗鬆(そしょう)症予防や免疫のサポートで欠かせない栄養素のビタミンD。だが、98%の日本人で基準濃度を下回ることが今年4月、海外の科学雑誌に論文が掲載されて明らかになった。研究責任者の東京慈恵会医科大学臨床検査医学講座の越智小枝教授は次のように話す。
「基準値は、干しシイタケを1日3個食べれば満たすことが可能です。生のシイタケと比べ、干しシイタケのビタミンD含有量は約30倍も高いからです。しかし、干しシイタケを1日3個食べるのも難しい。意外に、食事で摂れていないのではないかと思います」
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によれば、ビタミンDの1日摂取の目安量は、18歳以上で男女ともに8.5μg(マイクログラム)。厚労省の19年「国民健康・栄養調査」の摂取量に関する状況を見ると、ビタミンDの1日平均摂取量は6.9μgで、目安の摂取量に届いていない。
「ビタミンDが豊富な干しシイタケや魚類は、プリン体を多く含みます。プリン体が代謝して生み出す尿酸は、高尿酸血症の方や痛風発作を経験された方は、避けなければなりません。結果として、ビタミンD不足に陥っている人もいるのではないでしょうか」
閉経後の女性は骨粗鬆症と高尿酸血症のリスクに注意
健康診断で尿酸値が7.0㎎/dlを超えると高尿酸血症と診断され、足の親指の関節の腫れと激痛を伴う痛風発作を起こすリスクが高くなる。国内の高尿酸血症の推計患者数は1000万人以上。女性の場合は、女性ホルモン(エストロゲン)によって尿酸の排出が促されるため、高尿酸血症の患者は少ない。しかし、閉経後、女性ホルモンが急激に減少することで、高尿酸血症や痛風発作に見舞われることがある。
「女性は閉経後、女性ホルモンの減少で骨密度が低くなり、骨粗鬆症を起こしやすくなります。それを防ぐために、カルシウムの吸収を助けるビタミンDは、とても重要な働きをしています。食品でビタミンDを取りづらいときには、日光浴を意識しましょう」
一般的に1日20分程度の日光浴で、必要なビタミンDは体内で作られるといわれる。とはいえ、真夏の直射日光は強い紫外線によって、肌や身体にダメージを与えやすい。紫外線が皮膚がん発症のリスクを上げることはよく知られている。日傘や日焼け止め、地肌を隠す長袖などの衣類で肌を防御していると、ビタミンDは体内で作ることが難しくなる。
「毎日の食事や日光浴で不十分なビタミンDは、サプリメントで補うことも考えましょう。それほど、人体にとってビタミンDは重要です。多くの方にビタミンDの必要性をご理解いただきたいと思います」
ビタミンDを多く含む食品
- サケ
- サンマ
- イワシ丸干し
- カレイ
- ブリ
- しらす干し(半乾燥品)
- 干しシイタケ
- キクラゲ
※公益社団法人骨粗鬆症財団のリーフレット「ビタミンD/ビタミンKを多く含む食品」から