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メンズ美容の心得~美容の流行に飛びついてはいけない

メンズ美容の心得~美容の流行に飛びついてはいけない
エイジングケア
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美容の基準は時代や文化で異なる

10~20代の男性は、自分がかっこいいと思われるように(あるいは思えるように)、髪を整え、個性的な服を身に付け、時には化粧までします。若い世代の好奇心や自尊心はとても大切ですので、どんどんいろいろな自分に挑戦することはいいと思います。ただし、50歳を過ぎた男性は知的で節度ある身なりを心がけることをお勧めします。

では、そのカッコイイは、いったい誰から見てのカッコイイでしょうか? 美の基準は時代や文化によって違い、今も変わり続けています。

例えば、いつもブルカで全身を覆っているイランの女性にとって、鼻は他人から見られる数少ない部分であり、もっとなだらかな東洋人の鼻のほうがきれいだといわれています。手術も盛んで、テヘランは世界に冠たる“鼻の美容整形の首都”と呼ばれるほどです。日本人は逆に少しでも鼻を高くしようと整形手術をしているのに…。

今の世界では、欧米あるいは韓国の発信する流行が国際基準として定着しています。そして、同じようなタイプの若々しく、スラッとした高身長で、小顔の容貌がもてはやされているのです。

ただし、こうしたモデルはもともとスタイルのよい男性が厳しい食事制限やトレーニングを行い、有名なファッションメーカーやデザイナーから借りた服に身を包み、崩れないように固められたヘアスタイルとカメラ映えするようなメークをしています。こんな格好は万人向けではないですよね。私は50歳以降の男性がファッションリーダーのまねをして、“極端な美”へ向かうことはお勧めしません。

50歳以上の男性は自信と節度を持ってナチュラルに

少なくとも、自分なりに自信をもって年を重ねている男性は、過度に着飾ったりはしませんし、はやりのスタイルや商品にすぐに飛びついたりもしません。実際、美容医療の世界でも、数年前に人気のあった治療法や製品が今ではまったく選択されていないことはザラにあります。

実は女性よりも男性のほうが美容の歴史は古く、クロマニヨン人がいたころに、儀式など呪術的な目的から顔や身体を彩ったことが化粧の始まりとされています。

ツタンカーメン王のマスクからは化粧のみならず、カツラを着け、ヒゲを生やしていたことがわかります。西洋でもルネサンス期以降の肖像画を見ると、王侯や貴族の男性たちはしっかりと化粧をし、カツラをかぶっています。それがフランス革命などで特権階級がなくなったことに伴い、男性が化粧をする風習はすたれていきました。

わが日本でも平安時代の貴族の男性は、顔を白く塗ったり眉ずみで眉を描いたりと化粧をしていました。歯を黒く染める“お歯黒”もしています。それが明治時代になると、文明開化とともにそれまでのお歯黒や眉化粧をやめる動きが出て、男性の美容もすたれていきました。

私が言いたいのは、時代とともに移り変わるメンズ美容だからこそ、ナチュラル・ビューティーが大切だということです。人はそれぞれの骨格に合った美しさがあり、すてきなオーラを持っています。だからこそ、他人と比較ばかりしないで、安易に流行に飛びつかず、自分らしい最高の自分を目指してほしいのです。

  • 50歳以降の男性こそ、ナチュラル・ビューティーを目指す
  • メンズ美容は、過ぎたるは及ばざるがごとし
  • 美の基準は時代や文化によって異なり、今も変わり続けている
解説・執筆者
形成外科専門医
西嶌 暁生
医学博士、形成外科専門医、MBA。1984年7月7日生まれ、富山県出身。形成外科・美容医療の専門医として、10年以上、臨床と研究に従事。2019年から恵比寿形成外科・美容クリニック副院長。著書「だから夫は35歳で嫌われる~メンズスキンケアのススメ」(光文社)が発売中。