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硬くてニオう「ミイラ便」をスッキリ解消しましょう

硬くてニオう「ミイラ便」をスッキリ解消しましょう
予防・健康
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全国の60—80代男女600人の調査で「常に快便」は半数にとどまり、残りの約7割が「便通に悩みあり」と訴えた。50代以降から便秘気味の人は増え、3人に2人が「コロコロ便」「硬い便」「やや硬い便」であることも分かった。また、ニオイもきつくなるという。このような硬い乾燥した便を「ミイラ便」と名付け、生活に重大な危機をもたらすと警告する消化器内科医の工藤あき・工藤内科副院長に聞いた。

大腸に長くとどまり水分を吸収する「ミイラ便」

工藤先生はミイラ便についてこう説明する。

「加齢にともない肌や体が乾燥するように、水分の減少が便にも表れていき、年齢を重ねるほど便が固くなっていく傾向があります。またそれに加えて、本来は食べると反射でトイレに行きたくなりますが、そのタイミングを外すような習慣を続けるなど、便秘になりやすい状態にあることで、さらにカチカチのミイラ便になっていきやすくなります。大腸の働きは水分を吸収することですから、便が大腸に長くとどまるほど水分が吸収されコロコロ便や硬い便になってしまうのです」

便が大腸に長くとどまる便秘状態は調査によると50代から増えてくるという。

「50代は働き盛りですが、最近の欧米化した食生活により便秘に悩む世代も低年齢化する傾向があります。若い世代もミイラ便になっているかもしれません」

工藤先生が原因の1つに指摘するのは食の欧米化だ。

脂分や動物性タンパク質が多い食生活は生活習慣病のリスクを高め腸内環境としても悪玉菌が多くなります。ライフスタイルが大いに関係する点で生活習慣病の1つかもしれません

自分で判断できるミイラ便の兆候はどのようなものか。

「おならが多くなったり、便の匂いがきつくなったらミイラ便のサインといえるでしょう。便が大腸に長くとどまることで腐敗が進むために匂いがきつくなります。また毎日普通に出ていても便がひび割れていたら兆候かもしれません。自宅で注意して便を見てサインを見逃さないのは大事です」

ミイラ便と季節や気候との関係はあるのだろうか。

「4月の新生活が始まる時期は不安を覚えたりストレスを感じやすいので注意が必要です。通勤途中とか仕事中の会議や商談などでトイレに行きにくい状況で便秘になるとよく聞きます。また、冬場も多くなります。日照時間が短くなるとセロトニンなどのホルモンが出にくくなり気分が前向きでなくなるうえ寒いと家の中で過ごすことも多くなるので運動量が減って緊張状態が続き身体がリラックスできないからでしょう」

日本人は座りすぎとよく指摘されることも関係ありそうだ。

「サラリーマンはオフィスで座って仕事し家に帰れば疲れて座ってテレビを見る。座りっぱなしがよくないのは前かがみになりやすく、おなかを狭める形になるからです。30分に1回は立つようにといわれています。私はテレビを見ていてCMになったら足踏みするよう指導しています」

水分、食物繊維、ビフィズス菌の“腸活3種の神器”

ミイラ便から始まるおなかの不調は日常生活の支障となる。

「だるいとか仕事の能率も上がらないだけじゃありません。肌のくすみが出たり神経系の難病にも関係するという発表もあります。ホルモン分泌にも関係するのでいろいろな病気が現れるのです。人は腸内細菌が食べたいものによって支配されるという考え方もあるほどですから腸内環境は大事ですね」

便秘気味の人が快便になるために意識している対策も調査した。6割以上と群を抜いて多かったのは「ヨーグルトを食べる・飲む」だった。次いで「食物繊維を摂る」「水を飲む」「フルーツや野菜などを食べる」。

「食生活は洋食や中華より和食、主食はパスタやパンよりお米の方が食物繊維が摂れるのでおすすめします。腸内細菌のエサは食物繊維なので野菜や海藻、キノコもいい。頑張ってご飯1杯ずつ食べてほしい。ちょっと昔の70年代の和食が日本人には一番合うといわれます。サプリで摂るとその食物繊維が好きな細菌だけ増えるといわれますのでまんべんなくいろいろな食材を食べるのが大事です」

水分補給も大事だ。

「標準的な水分摂取量は1日1.5リットルくらいですが、1日コップ1、2杯は追加してください。オーバーでもおしっこで出ていきますので多めに摂りましょう。夜間のおしっこが気になって水を飲まない人は寝起きにコップ1杯飲みましょう。夜間に汗をかいて水分を失いますので大事なことです」

食物繊維、水に続きビフィズス菌は便秘対策の「3種の神器」といわれる。

「ビフィズス菌は日本人に特徴的に多い腸内細菌の1つですが、おなかの中で短鎖脂肪酸をつくってほかのいい腸内細菌が増えやすい環境にしてくれます。脂肪の分解にも関係しているともいわれますので身体にいい菌の代表格です。ビフィズス菌の摂り方としてはヨーグルトやサプリが一般的ですが、ビフィズス菌が含まれていないものもあるので、ビフィズス菌入りのヨーグルトやサプリで日常的にとるといいですね。便として出ていってしまうのでこまめにとるのが大事です。口に入れてから大腸に届くまで数時間かかるので夜に摂るのもいいですね。寝ているときには大腸の働きが活発になりますので効果的です」

大腸を動かすという点では運動もいいといわれる。

「運動が好きでないとストレスになることもありますので無理のない範囲で緊張を避けながらしてください。そういう意味ではリラックスできる趣味もいいでしょうね」

おなかを緊張から解放することが一番のようだ。

工藤あき

工藤内科副院長、日本内科学会認定医・日本消化器病学会専門医・日本消化器内視鏡学会専門医。一般内科医として地域医療に携わりながら内細菌・腸内フローラに精通。ダイエット・美肌・エイジングケアにも力を注ぐ。愛称は美肌から「むき卵肌ドクター」。

執筆者
「健活手帖」 編集部