”飲む美容液”として海外で人気に火がついた「ボーンブロス(Bone-broth)」。近年は日本でも食生活に取り入れ体質改善に励む人が増えている。その魅力とは?
飲んで体質改善
ボーンブロスとは、肉や魚の骨を煮込んでとった出汁のこと。骨にはタンパク質の原料になるアミノ酸、コラーゲン、ビタミン、ミネラル、カルシウムが豊富に含まれる。じっくり煮出すことで、硬くて食べられない骨の栄養素がスープに溶け出し、うま味エキスが凝縮されたスープになる。韓国では参鶏湯(サムゲタン)、フランスはフォンドボー、日本はあら汁などが知られる。

ボーンブロスは、現代人に不足しがちな栄養を補うスーパーフードとしても脚光を浴びている。「飽食の時代ですが、栄養バランスの偏りなどによる肥満や生活習慣病の増加、痩身志向、高齢者の低栄養化などは社会的課題です」と分子整合栄養医学普及協会講師で料理家の岩本綾子氏=写真=も警鐘を鳴らしている。

近年は日本でも、ボーンブロスを食生活に取り入れて体質改善を目指す人が増えている。整腸作用、美肌づくり、骨密度対策、ファスティングなど期待できる効果はさまざま。肥満対策にも一役買うという。
ボーンブロスの歴史は長い。紀元前5世紀、古代ギリシャの医師・ヒポクラテスは、消化器に問題を持つ患者の治療食として用いていたという。健康を守る免疫細胞の約7割は腸に生息していることから、整腸作用が期待できるボーンブロスはコロナ後を生き抜く強い味方にもなりそうだ。
ボーンブロスでダイエット
ボーンブロスは食前に飲むのがおすすめ。ボーンブロスのタンパク質は”やせホルモン”といわれるGLP-1の分泌を促す。これにより脳の満腹中枢が刺激され、食べ過ぎを抑える
おいしさと健康は両立できる
東京・大手町の「梯子(はしご)」は、ボーンブロスを使った本格懐石料理を提供している。コロナ禍の2021年、「おいしくて、食べるだけで自然に健康になるレストランを作ろう」というコンセプトのもと出店に向けて動き出したが、おいしさと健康を両立するのは容易ではなかったという。
看板料理は秋田県の比内地鶏を使った鳥料理。「”健美食”をかなえるため天然塩を採用し、減塩醤油やラカントも活用している」(寺田氏)。米は血糖値の上昇が緩やかなササニシキにこだわる。小麦を使わないグルテンフリーのお店。
東京都千代田区大手町2の3の1 大手町プレイス108
Instagram:@hashigo_0928
「管理栄養士の栄養指導に準じて体にやさしい料理を追求すると、病院食のような薄味になってしまう。これが課題だった」と総料理長を務める寺田嗣佐夫氏=顔写真=は当時を振り返る。
試行錯誤する中で出合ったのがボーンブロスだった。寺田氏とともにレシピを考案した岩本氏は、ボーンブロスに丸鶏を使うことを提案したという。
「鶏ガラで作ったスープには必須アミノ酸のトリプトファンが含まれない。特定の必須アミノ酸が不足すると、それを材料とするタンパク質が十分に合成されないため、肉をプラスして栄養価を高めました」(岩本氏)
丸鶏を使ったボーンブロスは力強い味わいになり、野菜を加えて甘みを引き立たせることで、飽きのこないボーンブロススープが完成した。
料理の幅が広がる
寺田氏は幼少から体が弱く、小学校時代は年間30日も休むほど病弱だったという。息子を気遣った母親は自ら無農薬野菜を栽培し、玄米食を徹底するほど食事に気を配った。美食家で外食好きだった祖父を早くに亡くした寺田氏も、食事の大切さを再認識したという。
ミシュランの一つ星レストランで働いた経験を持つ寺田氏は、「贔屓(ひいき)にしてもらったお客さまの中には生活習慣病の薬を内服しておられた人もいました。栄養バランスだけでなく食材や調味料にもこだわり抜いた店であれば、どなたも気兼ねなくお越しいただけるのではないか」と自信を見せる。
「ボーンブロスを活用すれば料理の幅が広がります」。そう力強く話す寺田氏は月に一度、料理教室を開き、ボーンブロスの作り方や活用法を指南している(別項)。
家庭でも作れる「簡単ボーンブロス」(例)
【材料(3~4人分)】
- 鶏手羽か手羽元:10本
- 玉ねぎ:1個
- にんじん:1本
- セロリ:1本
- 干し椎茸:2~3枚
- 塩(天然塩)
- 水:適量
【作り方】
- 玉ねぎを千切り、にんじん・セロリを食べやすい大きさに切る
- 鍋に油を少し入れ玉ねぎを蒸し炒めする
- 玉ねぎがやや飴色になったら水を含むすべての材料を入れ強火にかける
- 沸騰したら丁寧にアクを取り弱火で煮る
- 塩で味を整えたら完成
※お好みで野菜やキノコ類を足してもおいしい。取り出した手羽先を醤油とみりん1:1で照り焼きにしたり、ボーンブロスにルーを入れてカレーにするなど応用もできる