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【健活手帖インタビュー】牛窪恵さん~「おひとりさま」が自分の内面と向き合う大切な時間

【健活手帖インタビュー】牛窪恵さん~「おひとりさま」が自分の内面と向き合う大切な時間
コラム・体験記
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「おひとりさま」や「草食系」を世に広めた牛窪恵さんは、マーケティングライター、世代・トレンド評論家として多忙な毎日を送っています。テレビ出演、講演、執筆、大学院の授業、そして自社の運営などを精力的にこなすなか、カラダとメンタル面の元気をどのように保っているのでしょうか。話をうかがうと、心が折れないようにする手法は興味深く、キーワードは、やはり「おひとりさま」でした。

ホテルは多幸感得られる心のよりどころ

忙しい日常で心身がすり減った経験は誰しもあるでしょう。深刻なのは心のダメージで、傷が深いほど簡単には回復しなくなります。

牛窪さんは「ちょっとヤバいな…」と内面の黄信号を感じたとき、癒しを求める場があるそうです。

「ひとりでホテルに行きます。泊まってリラックスするほか、お茶だけのときもあります。自然に囲まれたところが好きですね。別に遠くへ出かけなくても、例えば都内だと庭がすてきなホテル椿山荘東京(東京都文京区)は、春には桜が見事で、夏にはホタルも楽しめます。お茶は友人と一緒のときもありますが、ひとりでゆっくりコーヒーなどをいただくのも格別です。自分の内面と向き合う貴重な時間ですね」

きっかけは社会人になったばかりの20代前半にさかのぼります。出張で大阪市内のホテルにひとりで滞在したとき、経験したことのない多幸感があふれ出てきました。以来、辛いとき、苦しいときの「心のよりどころ」にしているそうです。

スマホ断ちで新しい発想が生まれる

なぜホテルなのでしょうか。さらに記憶をさかのぼると子どもの頃の、夏休みの思い出にたどり着きます。父は殺人的スケジュールに追われるテレビ局員だったため、地方でのんびり過ごせる長期休暇を取れる環境にありません。一家の“旅行先”はもっぱら都内のホテル。家族そろった楽しく、懐かしい思い出の数々が心の奥底にやどり、ホテルを特別な場にしているのでしょう。

デジタル社会を生きる私たちは、自己の内面と向き合う、よい意味での孤独を感じられる時間を確保するのが難しくなりました。PCから離れる時間はあっても、スマートフォンは手放せない。メールは常時チェックするものとなり、やたらと「Cc」(共有メールの送信)が好きな人からは四六時中追いかけられます。

「まずは、ひとりの時間をいつ以来持てていないか、自分に問いかけてみるとよいでしょう。そして、スマホを置いてどのぐらい我慢できるか試してみる。『断つ』ことで気づくことがあるはずです。例えば、片方の手だけで荷物を持ち続けるとしびれてしまいますよね。いったん荷物を降ろしてみる発想が大切です。物事を別の角度からみるきっかけになります」

カラダの元気を維持するのも、年齢を重ねるごとに難しくなっていきます。牛窪さんは大病を患ったことこそありませんが、半年ほど前から座骨神経痛を患い、リハビリを継続しています。コロナの収束にあわせて出張が急激に増え、座ったままの長時間移動がこたえたようです。改善策の1つに取り組んでいるのがラジオ体操です。

ラジオ体操とゆっくりお風呂で良質の睡眠

「鼻を押すとラジオ体操が流れるブタの人形、ご存じですか? 夫の運動不足解消も兼ねて夫婦でラジオ体操をやっています。一度押すだけで音楽が流れる手軽さが習慣化にはぴったりですね。朝起きた後にブタの鼻を押すのが日課になっています」

さらに、心身の状態を保つためには良質の睡眠が欠かせません。牛窪さんは夜、まず湯舟にゆっくりつかり、ヘッドスパの要領で頭をもみほぐす。風呂から出ると軽くスクワットをこなし、ハーブティーを飲む。最近ではヤクルトの「ジョア」もお気に入りだそうです。そして、寝る直前の30分はあえてダラダラと動画を眺めます。韓国ドラマやプロ野球の動画が多く、音楽を聴きつつ、眠りにつきます。

専門分野である市場や各世代の動向、トレンドの第一人者である。それらの変化をつかむためには、常に感度の高さが求められます。

「人の動きをキャッチするのが仕事です。さまざまなことに興味を持って面白がるためには、まず自分が元気でなければダメです。これからもひとりの時間を大切にしながら、心身ともに元気であり続けたいですね」

(取材・久保木善浩)

牛窪恵(うしくぼ・めぐみ)

1968年、東京生まれ。出版社を経て2001年に起業。著作を通じて「おひとりさま」や「草食系」を広めた。立教大学大学院客員教授。近著にZ世代と親世代を描いた『若者たちのニューノーマル』(日経プレミアシリーズ)。今夏、『恋愛結婚の終焉(仮)』を出版予定。

執筆者
「健活手帖」 編集部