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医食同源の真実(5)~できるだけ体に負担をかけないお酒の飲み方

医食同源の真実(5)~できるだけ体に負担をかけないお酒の飲み方
予防・健康
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アルコールは容易に脳に浸入する

お酒の主成分は、エタノール(C2H5OH)です。水溶性の小さな有機溶媒なので、からだ中の生体膜を容易に通過し、身体中の水分に溶け込みます。

アルコールは他の食物と違って消化酵素を必要としないため、空腹でお酒を飲むと胃から急速に吸収されます。

さらにアルコールは、脳と血管の間にある脳血管関門というバリアーも容易に乗り越えて、大脳の神経細胞へも入り込んでいきます。アルコールの基本的な薬理作用は中枢神経の抑制であり、鎮静剤と同じような作用がありますが、アルコールには別の薬理作用もあって、極めて複雑なのです。ドーパミン系の活性化、セロトニン系の抑制があり、多幸感が出現します。

食欲は更新し、攻撃的になります。すなわち、アルコールにテストステロンが加わると暴力事件が極めて起きやすくなるのです。

またドーパミン系の報酬回路が活性化するので、アルコールには常習性が生じます。

一方、アルコールは肝臓でアルコール脱水素酵素(ADH)により分解され、アセトアルデヒド(CH3CHO)が生成されます。アセトアルデヒドは強烈な神経毒として知られています。

加えて、アルコールを毎日大量に飲むと、肝細胞内の脂質代謝や糖代謝を障害し、アルコール性臓器障害の原因となります。アセトアルデヒドをすぐに分解できない人は、毒性の強いアルデヒドによって急性アルコール中毒を引き起こすことがあります。お酒を飲んで顔が赤くなり、心臓がドキドキし、吐きそうになるタイプの人は、飲まないほうが良いのです。

飲み方と食べ方次第では脂肪肝の併発も

アルコールは栄養学的には、1グラムあたり7.1キロカロリーのエネルギーを有しています。アルコールを飲むと、まず優先的にエネルギーとして使われ、タンパク・糖質・脂質の構成成分として身体に蓄積することはありません。しかし、アルコールと同時に食べたものは、特に炭水化物が多い場合、すべて中性脂肪として体内に蓄積されてしまいます。結局、余剰カロリーになるのです。

アルコールを飲みすぎて酩酊(めいてい)した場合には、大脳の自己抑制の解除が起きて、たいていの場合、食べ過ぎることになります。

特にみなさんご存じの通り、シメのラーメンというやつは、やっかいです。高血糖を誘発し、余剰の糖分は中性脂肪となって、それが慢性的に続けばメタボの原因となります。

ここまでの話だと、アルコールは極めて体に悪いということになります。ですが、適量であればそのようなことはありません。適量のアルコール摂取は善玉コレステロールであるHDLコレステロールを上昇させ、また脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンの血中濃度を上昇させます。このため、メタボによるインスリン抵抗性の改善、抗動脈硬化作用も期待できます。

とはいえ、現在の日本では1日平均日本酒3合、ワイン500ミリリットル以上の多量飲酒者は900万人近く存在し、そしてアルコールによる問題が生じている人は500万人以上もいます。アルコールの許容度は個人差が大きいですが、あなたが、高脂血症である場合、脂肪肝の併発も疑われるのでよく注意してください。

アルコールはできるだけ濃度の薄いものを選び、食事と会話を楽しみながら、飲むのが妥当です。

解説・執筆者
脳外科医
氏家 弘
脳外科医。1978年、岩手医科大学卒業、東京女子医大で研修を積んだ後、2009~2017年、東京労災病院、脳神経外科部長。その間、脳神経外科手術と医工連携による医療機器の開発に没頭。2019年から氏家脳神経外科内科クリニック(東京・紀尾井町)院長を務め、鎌ケ谷総合病院でも手術を執刀する。暇を見つけては、好きなワインを傾けながら進化発生生物学に夢中になっている。