認知症 生活習慣病 医食同源の真実

医食同源の真実(4)~認知症を予防し頭脳明晰にするDHA

医食同源の真実(4)~認知症を予防し頭脳明晰にするDHA
予防・健康
文字サイズ

脂肪とコレステロールの違いとは?

病院の血液検査で気になってよく見る数値に、中性脂肪(トリグリセリド)、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロールなどがあります。

少し難しい話をします。食事から摂取する脂質の90%以上は、中性脂肪です。そして中性脂肪の構造は、グリセリンと呼ぶ3個並んだ炭素に3個脂肪酸が結合している状態です。すぐに水に溶けるブドウ糖やアミノ酸と違って、中性脂肪の炭素の数は極めて多く親水基はついていないので、水には溶けないのです。

炭素数が多くなると常温で個体となり、中性脂肪は見た目にも白い油の塊となります。この脂肪を消化して吸収するためには、胆汁と膵臓からの酵素(膵リパーゼ)が必要です。

小腸から吸収された中性脂肪、そしてコレステロールは水に溶けないので、水溶性のタンパク質と結合したリポタンパクの形で血液中を各細胞まで輸送されます。中性脂肪を末梢の脂肪組織に輸送するのが超低密度リポタンパク質(VLDL)で、コレステロールを抹消のすべての細胞に運ぶのが低密度リポタンパク質(LDL)です。

そして大事な点は、組織中に余ったコレステロールを回収して再び肝臓まで逆輸送するのが高密度リポタンパク質(HDL)であるということです。

LDLは悪玉コレステロールといわれ、目の敵にされていますが、コレステロールは細胞膜の構成成分であり、なくてはならない物質です。さらにステロイドホルモン(=生命や種族の維持に必須のホルモン)の原料にもなります。HDLは善玉コレステロールといわれ、HDLが高値を示すヒトは実際、遺伝的に長寿な家系が多いというのも事実です。

薬でLDLを低下させすぎると問題

ここで問題なのは、現在の日本ではこのLDLを下げるためにスタチンという薬が大量に使用されていて、LDLが下がりすぎている人が多くいるということです。実はLDLを最も必要としている組織とは脳なのです。

“脳は脂質の宝庫”といわれます。脳重量の10%、乾燥重量では50%が脂質で占められているのです。細胞膜や細胞内小器官の膜は基本的にリン脂質の2重層から成り立っている上、神経組織には特有のミエリン、軸策、シナプスなどの膜構造物の存在が脳脂質含有量を高くしているのです。神経の中を流れているのは、電気ですから、電気が漏電しないようにコレステロールを利用しているということになります。

もしスタチンを服用していて、物忘れがひどくなったり、しゃべり方が遅くなった時にはLDLが低下しすぎていないか調べてください。

認知症を予防する脂肪酸があると言ったら、みなさん驚きますか? それは、不飽和脂肪酸の中でもオメガ3といわれるドコサヘキサエン酸(DHA)です。

DHAは血管と脳との間にある脳血管関門というバリアーも通過することができ、認知症の原因となる不溶性で脳内に蓄積してしまうAβ(アミロイドベータ)オリゴマーの形成を抑制します。

ドコサヘキサエン酸は青魚に含まれて、不飽和脂肪酸です。いつまでも頭脳明晰であるために、できるだけ食べるようにしたいものですね。

解説・執筆者
脳外科医
氏家 弘
脳外科医。岩手医科大学卒業、東京女子医大で研修を積んだ後、2009~2017年、東京労災病院、脳神経外科部長。その間、脳神経外科手術と医工連携による医療機器の開発に没頭。2019年から氏家脳神経外科内科クリニック(東京・紀尾井町)院長を務め、鎌ケ谷総合病院でも手術を執刀する。