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【ベストセラー健康本】『コミックエッセイ 介護日記』~介護は“情報戦”だ

【ベストセラー健康本】『コミックエッセイ 介護日記』~介護は“情報戦”だ
予防・健康
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突然の介護…家族間での情報共有が重要

突然やってくる「親の介護」。必要に迫られ、慌てて情報を集めるが、わからないことだらけ…。そんな介護未経験者に役立つ情報満載で、経験者には共感必至の『コミックエッセイ 介護日記』(廣済堂出版刊、1540円)。著者の猿渡さる子氏=イラスト=が約6年の間にお世話になった病院・施設での両親の介護体験をわかりやすく描き、綴った。

本書の監修を務める和田秀樹医師は、解説文で「これまで日本にはなかったきわめて実用性の高い介護のガイドブック。多くの介護のことをよく知らない人にとって、実際に役立つ情報源」と記している。実際、本書にある「介護は情報戦」という言葉は、いざその立場に立ってしみじみ感じることだ。

記者も遠方に住む90代で要支援1も付かない目の不自由な父のもとに毎月帰省。同居の次女と、遠方に住む長女とのLINEグループは親の介護話で、ときには疲弊しそうになったことがある。だからこそ、“介護当事者”の猿渡氏が姉妹で決めたことや考えたこと、体験したことなどには強く共感した。その一部を挙げてみたい。

・家族間での情報共有は重要=本人が脳に損傷を受けると、その人が持っていた情報がわからなくなってしまうという問題が発生。最近ではこうした情報を共有するための「エンディング・ノート」も市販されている。

お金と「休み」も大切

・介護にはお金が必要=収入は急に増やせないため、確定申告の所得控除などの活用が重要。

・病院も施設も、痛いのは「個室料金」=相部屋のトラブルなど、ストレス軽減をカネで解消するのも手。あるいは親本人の年金・貯金や保険は、本人のために使う。

・介護休暇も利用=家族1人につき年5日間まで時間単位で取得可能(条件付きでパート、アルバイトにも適用)。

・高齢者制度は、全部申請書の提出が必要=自治体から自宅に書類が送られ、署名捺印して返送する流れのため、同居家族がいないと気付かないことも。

・お互い好きなことはやめないこと。

・親の介護のために子どもが仕事を辞めては絶対ダメ。

・多数盛り込まれた体験や教訓の中でも、最も重要なのが最後の2つではないかと、介護経験者の記者は感じた。

著者の猿渡氏は言う。

「父の介護は突然始まりました。何の知識も準備もなかったため、当初は目の前の課題をこなすのに精いっぱいでした。その後、父の介護をプロにお任せしてからは自身の、体験を振り返る精神的・時間的な余裕ができたので、備忘録として描き始めたのがきっかけです。介護は十人十色。いわゆるハウツー本ではなく『ある家族の介護生活はこうなんだ』と、軽い気持ちで読んでいただけるとうれしいです」

いつか来る介護の予習として、万人に勧めたい。

介護保険制度と要介護認定

  • 介護の入り口「地域包括支援センター」…親の介護が必要になったら、まずここに相談。どこにあるかわからない人は、自治体に問い合わせを
  • 介護保険を受けるには「介護認定」が必要…介護がどのくらい必要なのかを計って段階別に著したもの。介護度の軽い順に、要支援1.2から要介護1~5までの7つに区分。支給限度額や利用できるサービスが異なる。なお、支給額の1~3割(所得による)は自己負担

(詳しくは本書を参照)

執筆者
ジャーナリスト
田幸 和歌子
医療ジャーナリスト。1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経て、フリーランスのライターに。「週刊アサヒ芸能」で健康・医療関連のコラム「診察室のツボ」を連載中。『文藝春秋スーパードクターに教わる最新治療2023』での取材・執筆や、健康雑誌、女性誌などで女性の身体にまつわる記事を多数執筆。