要介護の親を自宅暮らしさせる方法
静岡で1人暮らしの母が、大腿骨骨折で救急搬送され、手術・入院・リハビリを経て退院した。母は施設には入らず、慣れ親しんだ自宅で再び暮らすことを選択した。
当座は、東京から駆けつけた私が一緒だったが、それ以降のことを考えなければいけない。1日中1人でいる日がないように、毎日、ヘルパーによる生活介助や訪問リハビリ、デイサービスなどの予定を入れた。
AIスピーカーも活躍している。入院中に視力の劣化が進んだ母は、1日に何度も「アレクサ、いま何時?」と聞いている。アレクサはAmazonが開発したAIスピーカーの愛称だ=写真。
「何回聞いても怒らないし、『ありがとう』というと、『どういたしまして、またいつでもどうぞ』と言ってくれるんだよ」と喜んでいる。
決して私のようにイライラして怒ったりしないのだ。AIスピーカーは会話もできるし、ニュース、天気予報も聞ける。安価で音声だけで操作でき、1人暮らしの高齢者宅に適している。
高齢者が自宅で暮らす場合、通院にかかる費用と時間が問題だ。母は内科、整形外科、眼科、歯科に通う。ヘルパーの付き添いを頼むとなると、介護保険内のサービスでは診察室の外まで。中までだと介護保険外サービスとなり、全額自己負担となる。介護保険サービスはなぜこうも複雑なのか。保険外サービスに対応する介護事業所もあるので、費用負担できる家庭なら利用を勧める。
「家族の話し合い」はなにより大事
通院にかかる交通費も悩ましい。母と私の場合、免許を持たないため、全てタクシー移動となる。病院はほとんど町外にあり、1回の通院で往復6000円超が飛ぶ。母が住む自治体では80歳以上の高齢者サービスとして、年間1万5000円まで、タクシー、路線バス、電車が使える利用券を配布していて、ありがたいが、2回通院するとほぼなくなる。
わが家では、隣町に住むいとこが母の診察日に車で送迎し、買い物にも同行してくれている。食事も、私が実家にいないとき、親戚や近所のかたが母に夕食を差し入れてくださることがある。遠距離介護では、親戚やご近所に感謝の気持ちが尽きない。お付き合いは大事にするべきだ。
遠距離介護の場合、帰省費用も大きい負担だ。私は、仕事の合間をぬって東京—三島を新幹線利用し、月4回往復すると3万円を超える。格安チケットだと、片道4070円が3500~3600円程度になる。
JRでは、201キロ以上の利用で最大3割引になるジパング倶楽部(男性満65歳以上、女性満60歳以上が対象、要年会費)や東海道・山陽・九州新幹線のエクスプレス予約、JR西日本の予約サービスe5489(いいごよやく)の中に割引制度がある。
航空各社には事前申請による介護割引制度がある。格安航空会社(LCC)も活用したい。
こうした金銭面もさることながら、3年前の父の突然の死と、現在の母の介護を通じて、本当に必要だと実感するのは、「家族の話し合い」だ。
かかりつけ医として長年在宅患者と向き合ってきた、三島市医師会長の吉冨雄治医師が語る。
「元気で意思表示ができるときにどのような生活をして、どんな介護や医療を受け人生の最後を迎えるかを家族や近しい人と話し合う『人生会議』をしておくべきです。在宅でも、施設入居でも一度きりの話し合いではなく、その後もどうしたいかを定期的に確認しましょう。将来の介護や医療措置について子供や親戚に伝えておくといいですね」