50代夫婦の食事は偏食・粗食になりがち
ここでは50歳を過ぎた夫婦の食事について考えます。50代も半ばになると、栄養バランスを考えないといけない子供が巣立ち、互いの好きなものをチョイスし、偏食・粗食になることがあります。
しかし、この時期にこそ、必要な栄養素をしっかりとらないと、認知症や寝たきりのリスクが高まります。世界保健機関(WHO)が発表した2022年版の統計によると、日本人の平均寿命は84.3歳(世界1位)。男性は81.5歳(同2位)、女性は86.9歳(同1位)ですが、健康寿命になると、男性で72.7歳、女性で75.4歳と、男性では約9年、女性で約12年も乖離(かいり)します。
アンチエイジングは、健康があって初めて成り立ちます。事実、肥満や糖尿病、高脂血症、喫煙、骨粗鬆(こつそしょう)症などが遺伝子・細胞レベルで老化を早めるという研究結果があります。
さらに、細胞の老化に深く関係するDNAのメチル化は女性よりも男性のほうが進行が早く、「男性」というだけで老化を促進するリスクがあるといえます。
作るのがおっくうになりがちな世代だからこそ、20年先も健康で生き生きと過ごせるように食生活を意識しましょう。
元気な高齢者は肉好きが多いです。年をとると代謝が落ちるので必要なカロリーは減りますが、骨格や筋肉、血液、免疫力などの健康維持に必要なタンパク質は若いときとほとんど変わりません。そのため、食事に占めるタンパク質の割合は年齢を重ねるほど増えるのです。
タンパク質は多く、塩分は控えめに
タンパク質は穀物にも多いですが、体内で利用できない割合が多く、例えば米に含まれるタンパク質の約40%は吸収されず排泄(はいせつ)されます。その点、動物性タンパク質は人間の体のアミノ酸構成に近いため、消化にかかる負担が少なく、効率的に利用できます。なのでご飯やパン、麺といった主食を減らし、動物性食品(肉、魚、卵など)の割合を増やすように心がけましょう。
塩分のとり過ぎは高血圧や動脈硬化のリスクを上げますが、控えすぎると味気ない食事になってしまい、食欲がうせて栄養不足につながります。1日8~9グラムを目標に、香辛料や酸味でうまくカバーしましょう。
欧米のアンチエイジングの研究で一致している見解は、カロリー制限により細胞内のオートファジー(自食作用)を活性化させることが重要だということです。
さらに、夫婦2人が食べる量は思ったよりも少ないものなので、買い物や献立もそれらに合わせましょう。
具体的には、まとめ買いではなく小分け買いをする、品数にはこだわらず1食2菜でもOK、冷蔵庫に食材・食品をため込まない、献立計画は3日分をざっくりと作り、3日間で栄養バランスを調整する…などがコツです。
これをきっかけに、夫婦の食生活を見直してみてはいかがでしょうか。
50歳を過ぎてからの食事のポイント
- 50歳以降の夫婦ごはんは偏食・粗食になりやすい
- 若いときよりも動物性タンパク質の割合を増やし、カロリー制限は主食で行う
- 夫婦2人の食生活はちょっと少なめがベター