小さな早期がんを発見できれば、治療は身体的侵襲も少なく、経済的にも負担が軽く済む。だが、一般的な定期健診では早期がんを見つけることが難しい。だからこそ国もがん検診を推奨しているのだが、受診率は男性の肺がん検診(約53%)を除き、全て50%に届いていない。女性の胃がん検診は約37%の受診率で最も低い(厚労省2019年「国民生活基礎調査」)。
「胃がんは、ヘリコバクター・ピロリの感染が最大原因です。しかし、上部内視鏡検査を受けなければ、ピロリ菌の有無もわかりません。がん検診や人間ドックで上部内視鏡検査を受けていただきたいのです」
こう話すのは、がん研究会有明病院健診センターの藤崎順子センター長。胃がんや食道がんの診断・治療を数多く行い、胃がんの内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の第一人者としても有名だ。
「がん検診を受けるときには、検査技術のクオリティーも考慮することが大切です。たとえば、胃がんが発生しやすいのは、ピロリ菌による慢性胃炎のことが多い。慢性胃炎の中にある胃がんは、見つけにくいがんのひとつなのです」
「こちらのセンターでは胃がんの発見が、自治体の平均値よりも6倍も高い確率です」
とはいえ、がん検診を受けさえすれば、早期がんが発見できると漫然と思ってはいけないという。どのように検査を行っているのか、その中身も吟味する必要がある。
「女性は、子宮頸がん検診を自治体のがん検診で受けることができます。が、年齢が上がるにつれて発症しやすい子宮体がんや卵巣がんは調べることができません。それをご存じない方もいるのです」
子宮頚がん検診は、子宮が膣とつながっている子宮頚部を膣鏡(ちつきょう)という医療機器で観察し、ブラシなどで細胞を採取する。一方、子宮体がん検診は、子宮の奥の子宮内膜の細胞の検査などが必要になる。子宮頸がん検診では子宮体がんの有無を知ることは基本的にはできない。
「クオリティーの高い検査で早期発見・早期治療につなげることが、私たちがん専門病院の使命だと思っています。がん検診適応の年齢を超えた、あるいは、ご両親などにがん患者さんがいる方は、中身を精査してがん検診や人間ドックを活用していただきたいと思います」
ただ検査を受ければ安心というわけではなく、どのような検査が行われているのかが大切。中身をよく知った上で、専門医と相談しながら、個人個人が必要な選択することが求められている。
国が推奨するがん検診
【胃がん検診】
50歳以上2年に1回、胃部X線検査(40歳以上年1回実施可)、または、胃内視鏡検査のいずれか
【子宮頸がん検診】
20歳以上2年に1回、視診、子宮頚部の細胞診および内診
【肺がん検診】
40歳以上年1回、胸部X線検査及び喀痰細胞診
【乳がん検診】
40歳以上2年に1回、乳房X線検査(マンモグラフィ)