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寝付くまでに2時間以上…更年期の不眠のメカニズムを解説

寝付くまでに2時間以上…更年期の不眠のメカニズムを解説
エイジングケア
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「もう寝る時間だけど、なかなか寝付けず、気づけば2時間以上も経っている…」

更年期になってから、このような経験をしたことがある女性は多いのではないでしょうか? 更年期に入ると、ホルモンバランスの乱れによって、体調にさまざまな変化があらわれます。とくに、不眠は日中の疲れや集中力の低下などにつながり、生活に大きな影響を与えてしまいます。

この記事では、更年期の不眠に悩まれている上田さん(仮名)の相談例をもとに、更年期における不眠のメカニズムと改善方法についてご紹介します。

布団に入ると目が冴える?

上田さん(48歳・専業主婦)は不眠に悩んでいます。
夜、布団に入ってもなかなか寝付けません。寝ようとすればするほど目や頭が冴えてしまう感じがします。朝になっても疲れが取れず、頭痛がすることもあります。

ストレスが原因だと思い、リラックスするために瞑想やヨガなどを試しましたが、あまり改善されませんでした。その後、睡眠薬を試してみましたが、日中も眠かったり、だるかったりで、からだに合わなくてやめてしまったそうです。

この不眠と今後どのように付き合っていけばいいのか心配になり、上田さんは病院を受診することにしました。以下、上田さんと医師のやり取りです。

上田さん「最近、夜に布団に入っても2時間以上眠れず、困っています。ストレス解消法や睡眠薬も試しましたが、効果がありませんでした。どうすればこの不眠を改善できるのでしょうか?」

先生「不眠の原因がわからず、悩まれているのですね。上田さんの不眠は、年齢的にみて更年期が原因の可能性があります。実は更年期の女性の約半数が不眠になると言われています。もともと加齢により睡眠は浅く短くなりますが、のぼせや発汗、動悸などがきっかけとなり、深く眠れないこともあります」

不眠の原因は「ホルモンバランス」の乱れ

なぜ、更年期の女性に不眠がみられるのでしょうか。その原因について説明します。

更年期では、女性の体内で卵巣から分泌される女性ホルモンが減少することで、不眠などの睡眠障害が起こることがあります。ホルモンは脳からの指令を受けているため、女性ホルモンのバランスが崩れることにより、脳と卵巣の連携が乱れ、自律神経にも影響を及ぼします。この自律神経の乱れにより、睡眠の質が低下することがあるのです。

また、更年期ではホットフラッシュ(ほてりや発汗などの症状)が起こる人もいます。ホットフラッシュは夜間にも起こることがあり、寝汗などの不快感を引き起こします。この不快感によって睡眠の質が低下し、不眠につながることが考えられます。

さらに、更年期には女性ホルモンが激減するだけでなく、子供の独立や、からだの衰えといったさまざまなストレスが増えがちです。ストレスによって交感神経が優位になることで、不眠を引き起こすこともあります。

不眠によく効くツボ

ここからは、不眠を解消する方法のひとつとして、今すぐ試せるツボについてご紹介します。

失眠(しつみん)

「失眠」とは、かかとの中央の少しへこんだ部分にあるツボです。
不眠を緩和させる代表的なツボで、むくみ・ひざ関節痛・下半身の冷えなどへの効果も期待できます。

百会(ひゃくえ)

「百会」は頭頂部にあるツボで、両耳を結んだ直線と鼻から後頭部中央を結んだ直線の2つの線が交わる場所にあります。
精神不安を抑えて、ストレスを解消するツボで、疲労感・頭痛・抜け毛にも効果が期待されます。

<不眠の悩みには漢方薬もおすすめ>

不眠の改善には、漢方薬を活用するのもおすすめです。漢方薬は自然由来の生薬でつくられており、心やからだ全体のバランスを整えて、不眠の体質改善に働きかけます。

また、ホルモンバランスや自律神経の乱れなどを体質から改善することを目的としているので、不眠や更年期にあらわれるいくつもの症状に同時にアプローチするのが得意です。

不眠は、ストレスなどの心理的原因や過労などの心身的原因、血流不足などが原因で生じると考えられています。そのため、不眠の改善には、下記のような働きのある生薬を含む漢方薬を選びます。

・自律神経の乱れを整え、ストレスが原因の疲労や睡眠の質を改善する
・いらだちや興奮を鎮めて寝付きをよくする
・消化・吸収機能を改善してからだに栄養を届け、心とからだを元気にする
・血流をよくして中枢神経の機能を回復させ、安眠に導く

漢方薬は根本からの体質改善が目指せるので、不眠になりにくいからだを手に入れることもできます。「睡眠薬を飲むのは抵抗がある」という人でも試しやすいでしょう。

不眠の改善におすすめの漢方薬

加味逍遙散(かみしょうようさん)

「気(き=エネルギー)」の流れを整えることで、からだの熱を冷まして精神状態を安定させる漢方薬で、不眠を改善します。イライラしがちで、のぼせ、肩こり、疲労感がある人におすすめです。

抑肝散(よくかんさん)

イライラや怒りのもとである肝の高ぶりを抑える漢方薬で、神経症や不眠を改善します。イライラや緊張で眠れない人におすすめです。

酸棗仁湯(さんそうにんとう)

「血(けつ=栄養)」を補って熱を取り去ることで、ストレスや過労による神経の興奮や緊張を和らげる漢方薬です。疲れすぎて眠れないといった不眠を改善します。心身の疲労や不安感がある人におすすめです。

柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)

「気」の巡りをよくして神経の高ぶりを鎮める漢方薬で、不眠を改善します。ストレスを感じることが多く、動悸、不眠、イライラする人におすすめです。

ただ、からだにやさしい漢方薬とはいえ、自分の体質に合っていなければ、よい効果が見込めないだけでなく、からだに負担を与える場合もあります。自分に合う漢方薬を見つけるためにも、漢方に詳しい医師、薬剤師に相談することが大切です。

スマホで気軽に薬剤師に相談できる「あんしん漢方」のような新しいサービスもおすすめです。AIと漢方のプロが、効く漢方を見極めて自宅に郵送してくれる「オンライン個別相談」を実施しています。
 

更年期の不眠を改善しよう

今まで行ってきたリラックス法や睡眠薬ではうまく寝られなかった上田さんですが、今回紹介されたツボや漢方なら手軽に始められそうなので、前向きに試してみることにしました。「更年期だから…」と諦める前に、ぜひ今回ご紹介した改善方法を試してみてくださいね。自分に合った方法で更年期を乗り切り、不眠の改善を目指しましょう。

解説・執筆者
あんしん漢方薬剤師
碇 純子
薬剤師。漢方薬生薬認定薬剤師 。理学博士、薬学修士。神戸薬科大学大学院薬学研究科、大阪大学大学院生命機能研究科修了。漢方薬の作用機序を科学的に解明するため、大阪大学で博士研究員として従事。現在は細胞生物学と漢方薬の知識と経験を活かして、漢方薬製剤の研究開発を行う。