日本人の死亡で最も多い病気はがんですが、中でもこの20年で急増しているのが大腸がんです。
1997年には3万3194人だった大腸がんの患者数は、2019年には15万5625人と5倍近く増え、患者数では最も多いがんになりました。性別に見ると男性が8万7872人、女性は6万7753人です。死亡数では、大腸がんは20年には5万1788人と2番目に多いがんとなりました。性別では男性が2万7718人、女性が2万4070人です。男性は肺がん、胃がんに次いで3位、女性は肺がんを抑えて1位です。
ところが、米国では逆に大腸がんが減少しています。米国では国民の生活習慣を改善することで病気を減らそうという「ヘルシーピープル」という国家的プロジェクトが進められました。野菜を毎日350グラム以上食べるという生活習慣を勧めてきた結果、10年ほど前に目標が達成されて大腸がんは減少しました。野菜に含まれる抗酸化物質の作用が、がんの予防に働くと言われています。
一方、日本ではテレビの健康番組で野菜に含まれる食物繊維に大腸がんを予防する働きがあるという情報が最近までまことしやかに流されてきました。食物繊維を摂取すると便秘が解消し、大腸にたまっている老廃物が排泄(はいせつ)されて大腸がんの予防になるというのです。
しかし、この情報は医学的根拠のない真っ赤な大嘘です。食物繊維が大腸がんの予防になるのなら大腸がんの要因は便秘ということになります。便秘は男性より女性が多いのに、大腸がんは男性の方が多いのです。こうした事実からも、テレビの話は間違いということがわかります。
厚生労働省の「平成30年国民健康・栄養調査」によると、日本人の1日の野菜摂取量は281グラムですから、米国のプロジェクトの1日350グラムと比べて不足分は69グラム。ほぼ1皿分の野菜に相当します。つまり、大腸がんの予防は野菜を毎日1皿だけ余計に食べればいいということになります。
さらに、大腸がんの5年生存率は71.1%とかなり高いようです。がん検診で早期発見することも最大の予防です。