糖尿病治療は血糖値をコントロールすることが、最大のポイントです。高すぎる血糖値を下げ、基準値の範囲内に納めなければなりません。「HbA1c」(ヘモグロビン・エーワンシー)で言うと、6.5%未満です。
そのため、①食事療法(炭水化物と塩分を控えめ)、②適度な運動、③投薬療法―を行います。
ところが、③のクスリに関して、無関心な方が多いことに驚きます。自分が飲んでいるクスリの名前を知らないばかりか、ただ飲めばいいとだけ思っている方が意外に多いのです。正しい知識を持って正しく飲まなければ意味がありません。
私も2005年に糖尿病を発症して以来、クスリを飲み続けています。そこで言えるのは、服用をいい加減にしてはいけないということです。
まず、クスリには副作用があります。
クスリとは人間の体になんらかの影響を与える物質と捉えれば、それがよい影響なら「効果」となり、悪い影響なら「副作用」となるわけです。風邪薬を飲むと眠くなるというのが副作用です。血糖を下げるクスリの最大の副作用は、低血糖症を招くことです。
次に知っておくべきは、多くのクスリが病気の症状を緩和させるもので、病気そのものを治すものではないということ。風邪薬は風邪を治すのではなく症状を緩和させるだけです。同様に糖尿病のクスリは、血糖値の上昇を緩和させるもので、糖尿病を治すわけではありません。よって、服用をやめると病状は悪化します。
血糖値を下げるクスリには、飲み薬(経口薬)と注射薬があり、ここでは飲み薬について説明します。その作用により大きく分けて3種類があります。①インスリン分泌低下を補う=SU薬、グリニド薬、DPP―4阻害薬など、②インスリン抵抗性を改善する=ビグアナイド薬、グリミン薬など、③糖の吸収や排泄を調節する=α―グルコシダーゼ阻害薬など。
これらのクスリは患者の状況により処方されます。ですので、なぜそのクスリなのか必ず医者に聞くべきです。
SU薬、DPP―4阻害薬などの名前は有効成分から分類した一般名であり商品名ではないので、一般の方にはなじみがありません。しかし、自分が飲んでいるクスリの商品名から、どのクスリかを確認することは重要です。
たとえば、糖尿病を発症して間もない患者さんが最初に処方されるものに「エクア」や「ネシーナ」がありますが、これは「DPP―4阻害薬」で、日本でいちばん多く使われているクスリです。ただ、低血糖を招くリスクがあります。
「ダオニール」「グリミクロン」もよく処方される「SU薬」ですが、飲み過ぎると低血糖を招きます。「SU薬」は、弱っている膵臓に無理やりインスリン分泌させるクスリなので、飲みすぎは危険なのです。高齢者では腎臓や肝臓の機能が低下している場合が多いので、医者に確かめましょう。昔からよく処方される「メトグルコ」は「ビグアナイド薬」で、これだけで十分とする医者もいます。
ただ、糖尿病治療は日進月歩で、いくつかのクスリを組み合わせて効果を高める処方も行われています。
現在、私が服用しているのは、DPP―4阻害薬の「エクア」(朝夕1錠)です。また、血糖値に合わせてインスリン製剤の「ランスタXR」を2~6単位皮下注射しています。
クスリをいつも通り服用しても、食事を抜いたり、量が少なかったり、運動量が多いときなどに、低血糖症は起こりやすいので要注意です。