みなさま、こんにちは。漢方王子こと漢方薬剤師の野口貴司です。今回は「肌荒れ」についてご紹介したいと思います。
マスクを外す機会が増え、「肌荒れが気になる」というご相談をよく受けます。化粧品を塗ってもお顔に艶がない、小じわが出てきた、シミも濃くなっているなど、肌の悩みは女性、男性問わずに、尽きることがありません。一般的に、肌の表面のバリア機能が破たんすると、乾燥や炎症が起こり肌荒れにつながります。また、肌の弾力が失われるとシワ、色素細胞の変性でシミが生じます。これらの原因は、洗い過ぎや紫外線、偏った食事、老化とよくいわれています
東洋医学では、肌の乾燥、シワ、シミなどに、「血虚(けっきょ)」が深く関わります。
人間の体は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」で成り立つというのが東洋医学の考えです。わかりやすくいえば、「気」は全身を動かす気力や元気で、「血」は全身に栄養を届けてエネルギーを生み出し、「水」は身体を潤し、体がスムーズに動けるように作用します。もちろん、「気・血・水」は、そのほかに細かい働きがたくさんありますので、折に触れ別の機会のときにお話いたします。
「血虚」は、「血」が足りない状態で、全身の細胞や組織が栄養不足に陥っているイメージです。栄養が届かないと肌は新しい細胞や組織を作ることができません。新陳代謝が悪くなり、シミ、シワ、たるみを生み出すことになるのです。肌だけでなく、髪の毛はパサパサで艶がなく、その状態が続くと髪の毛が抜けやすくなります。爪も薄くなって割れるようなことも起こります。
さらに、「血」の流れが悪い「瘀血(おけつ)」という状態になると、手足は冷たくなり、夏でもエアコンや冷たい飲み物などによる冷えを感じやすい方もいます。また、めまい、立ちくらみなどを起こすのも「血虚」の典型的なパターンです。加えて、かすみ目、動悸、息切れなど、全身のさまざまな症状につながっているのです。いわば「肌荒れ」は、全身の栄養不足のサインともいえます。
男女問わずに「血虚」は起こりますが、女性の場合は月経によってもともと「血」が不足しやすく、不正出血、ストレス過多、更年期ではさらに「血虚」に陥りやすくなります。胃腸が弱い方、ストレスで食事が十分にとれない方なども、注意が必要です。
「血虚」を改善するには、偏った食事を見直して栄養補給を心掛けることが大切になります。「血」を補うことを「補血(ほけつ)」といいます。「補血」の第一歩は、肉類や魚類、卵、大豆製品など、タンパク質を多く含む食材を摂ることです。タンパク質が不足し、代わりに糖質が多い偏った食生活になってしまっていると、「血虚」になりやすい上に、「気・水」に対しても影響を及ぼしてしまいます。糖質を摂りすぎない生活も大切なのです。
「血虚」の改善によく用いられる生薬として、「当帰(トウキ)」があります。当帰が含まれている漢方はたくさんありますが、ご自身の体質に一番合っているものを選ぶことが大切です。医師や薬剤師と相談していただきたいと思います。
ご一緒に解決してまいりましょう。