みなさま、こんにちは。漢方王子こと漢方薬剤師の野口貴司です。今回は、分子栄養学に基づくストレスの予防法をご紹介したいと思います。分子栄養学は、ビタミンやミネラルなどの適切な栄養素を最適な量で取り入れることで、病気の予防や治療を行い、心身ともに本来の健康な状態にする栄養療法の学問です。中でも、今回はストレスとビタミンCについてお話しいたします。
女性も、男性も、50歳前後から性ホルモンの減少によって更年期症状に悩まされることが多く、ストレスも感じやすくなるでしょう。特に4月は、職場の移動や引っ越しなど生活環境も変わりやすく、ストレスがたまる時期とも重なります。でも、人によってストレスの感じ方はさまざまなのです。同じストレスを受けてひどく心身にダメージを受ける人もいれば、受けない人もいます。それは、自律神経の働きや、血流、普段の生活(食事、睡眠、運動)などが個人によって異なるからです。
個人差のあるストレスですが、誰もが簡単に取り組めるストレス対策があります。それがビタミンCの補充です。ビタミンCがたっぷり体内にあると、抗ストレスホルモンをたくさん作ることができるのです。
人間の体は、強いストレスを受けたときに、抗ストレスホルモンのコルチゾールを多量に作ります。コルチゾールは、ストレスによる炎症抑制や血圧上昇の安定化、脳の興奮抑制など、さまざまな作用があります。簡略にいえば、コルチゾールがスムーズに作用すれば、強いストレスを受けても、受け流すことが可能になるのです。
コルチゾールを作っているのは、腎臓の上の2~3センチの副腎という小さな臓器です。コルチゾールを作るためにビタミンCは欠かせません。血液中のビタミンCの量を「1」とすると、副腎は150倍の量のビタミンCを必要としています。ビタミンCが足りないと、ストレスに抵抗するためのコルチゾールをうまく作ることができないのです。
みなさまは、ビタミンCをとっていますか?
厚生労働省の2019年「国民健康・栄養調査」によれば、ビタミンCの平均摂取量は1人1日平均94ミリグラム。日本人の「食事摂取基準(2020年版)」の15歳以上の推奨量が1日100ミリグラムですから、その値にも届いていないといえます。そもそも1日100ミリグラムは、ビタミンC不足が引き起こす「壊血病」を予防する観点から定められた量に過ぎません。
ストレスを退けるために必要なビタミンCは1日100ミリグラムでは足りないのです。副腎が多量のビタミンCを必要とすることから、1日1000ミリグラム以上は摂取した方がよいでしょう。ビタミンCは、コラーゲンを作るためにも必要で、シワやシミを防ぐために重要な役割を担っています。免疫のサポートにも大切な働きをし、風邪対策にもビタミンCは欠かせません。全身のさまざまな組織や細胞でビタミンCは活用されているので、常にたっぷり体内にキープすることが大切なのです。その方法については、別の機会でご紹介します。
ストレスを感じやすい更年期の方も、職場や家庭のストレスに悩まされている方も、まずはビタミンCをサプリメントでとることから始めましょう。
もちろん、更年期にはストレス以外にもさまざまな悩ましい症状があります。ひとつずつ、ご一緒に解決してまいりましょう。