自分の肥満のタイプが病気につながる内臓脂肪型か、そうでない皮下脂肪型か、簡便に分かる時代になってきている。
世界肥満デーの3月4日、都内のイベント会場では、最新の内臓脂肪計を使った測定会が開かれた。参加者の中田陽介さん(60代・仮名)は、数値が「131」とモニターに映し出され、「まさか、自分が100平方センチを超えていたなんて」とショックを受けた。
「内臓脂肪面積は100平方センチを超えると、内臓脂肪型肥満と診断されます。130台はやや深刻な数値です。ここで治療の対策を取らないと、さまざま病気を発症するリスクが高まります」と琉球大学大学院医学研究科の益崎裕章教授。
内臓脂肪の測定は以前ならCT検査でへその高さの腹囲の断面から測定していたが、最近では内臓脂肪計が登場。おなかにベルトを巻き10秒足らずで測定できる。病気を伴う肥満(肥満症)は内臓脂肪型で、関連する11種類の病気のうちの1つは要警戒の糖尿病である。
「糖尿病の人は3大合併症のほか、心筋梗塞や脳梗塞につながる恐れが高まります」
3大合併症の中には、腎臓の働きが悪くなる糖尿病性腎症があり、悪化すると、人工透析を受けることになる。「人工透析は週3回ほど、医療機関に通い受ける必要があり、とても不自由な生活を強いられます」
そのほかの合併症として糖尿病性神経障害がある。足の感覚が鈍くなるため、症状に気づいた時は足の細胞の壊死(えし)が始まっており、足を切断するケースも少なくない。
ある男性患者の例では、健診で糖尿病と診断され、専門医を受診。自覚症状がなかったため薬物治療を継続せず、1年後、再受診した際には足の壊死が進行し、膝から下を切断せざるを得なかった。また糖尿病は、心筋梗塞や脳梗塞につながるリスクのほか、新型コロナに感染すると重症化するとも言われた。
「糖尿病はもともとは、糖質の多い食事の摂りすぎが原因です。それによってインスリン抵抗性(インスリンの効きが悪くなる症状)が起き、血液中のブドウ糖が増えてしまう病気です」
糖尿病や肥満を減らすヒントは、沖縄県で長寿のお年寄りが食べていた玄米にある。益崎教授はその特質に着目して研究している。
「玄米を習慣的に摂取すると、脳を変え、腸を変えます。腸と脳は腸内細菌の発酵代謝産物などを介して密接につながっています。玄米に豊富に含有される機能成分に関する私たちの研究から、玄米の習慣的摂取が動物性脂肪に対する依存性を和らげたり、アルコールに対する依存性を緩和したり、老齢になって顕在化してくる認知機能の低下を防いだりする新しい効果が明らかになっています」
玄米に慣れるにはどうすればいいか。
「最近ではおいしく食べられる玄米も多数、販売されており、慣れるまでは1日の食事のどこかで1回、玄米食にするとか、白米と玄米を1:1くらいで混ぜて食べてみるとか、段階的に摂取量を工夫すれば、継続して摂取しやすくなります」
肥満が引き起こす11の健康障害
□糖尿病
□脂質異常症
□高血圧
□高尿酸血症・痛風
□心筋梗塞・狭心症
□脳梗塞
□脂肪肝
□月経異常・不妊
□睡眠時無呼吸症候群など
□変形性ひざ関節症など
□肥満関連腎臓病