脳・脳疾患 「めまい」の正しい対処法

突然襲う「めまい」の正しい対処法③~耳石がはがれて三半規管に入る要因に骨粗鬆症との深い関係

突然襲う「めまい」の正しい対処法③~耳石がはがれて三半規管に入る要因に骨粗鬆症との深い関係
病気・治療
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加齢にともない一般的に「足腰が弱くなる」といわれる。骨ももろくなり、転倒骨折を起こしやすい。このような状態のときに、めまいも起こりやすくなるという。

「めまいの原因で最も多い良性発作性頭位めまい症は、骨粗鬆(こつそしょう)症との関係が深いのです」

こう話す聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科の肥塚泉特任教授は、めまいの診断・治療・研究を長年行い、新たな診断法や治療法も開発。めまい治療の第一人者である。

「良性発作性頭位めまい症は、平衡感覚をつかさどる三半規管に、耳石という炭酸カルシウムの結晶が、耳石器からはがれて紛れ込んだ結果、めまいが起こります。この耳石が、骨粗鬆症でもろくなり、はがれやすくなると考えられているのです」

骨は破壊と形成を繰り返すことで丈夫な骨を維持している。女性の場合は、閉経後の女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少で、骨の形成に関わる細胞(骨芽細胞)の働きが低下し、骨がもろくなる。同時に、炭酸カルシウムで成り立っている耳石も、骨と同様にもろくなってしまうのだ。

「健康な人の耳石は、形も大きくきれいに並んでいます。が、骨粗鬆症の方の耳石は、形が小さくなって形もバラバラ。はがれやすくなっているのです。三半規管にはがれた耳石が入り込むとめまいが起こります」

少量の耳石がはがれて三半規管に紛れ込んでも、寝返りを打ったときなどに、自然に排出できる仕組みがある。しかし、骨粗鬆症でたくさんの耳石のかけらが三半規管に紛れ込むと、自然に排出するのが難しい。加えて、運動不足で体を動かさないでいると、三半規管にたまった耳石のかけらが集まってかたまりとなる。それが、頭を上に向けたときなどに三半規管内を移動して、誤った平衡感覚の情報を伝えるようになり、めまいにつながるのだ。

全世界で共通していますが、40~70代の良性発作性頭位めまい症の患者さんは、男性に対して女性は4~5倍も多いのです」

良性発作性頭位めまい症を防ぐには、運動習慣を維持し、骨を強化するためのカルシウムやビタミンDなどの栄養素を含む食材を意識して食べるのがコツ。牛乳や魚、キノコ類など、バランスよく取り入れて食べよう。それでも、めまいが起こったら医療機関へ。

「良性発作性頭位めまい症であれば、耳石置換法と呼ばれる一種の理学療法で治すことが可能です。しかし、耳のめまいで最も多い良性発作性頭位めまい症は、知名度のあるメニエール病と誤診されることもあります。メニエール病に対しては、薬物治療が主体となりますので注意が必要です」

耳石がはがれて三半規管に入る要因

□女性ホルモン(エストロゲン)の低下による骨粗鬆症
□運動不足で、頭や体を動かす機会が少ない
□寝返りを打ちづらい寝具
□頭を打つような事故
□マッサージ器による振動

※肥塚泉監修『図解 専門医が教える!めまい・メニエール病を自分で治す正しい知識と最新療法』(日本書院本社刊)から

「健活手帖」 2023-03-09 公開
解説
聖マリアンナ医大教授
肥塚 泉
聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科特任教授。日本めまい平衡医学会顧問。1981年聖マリアンナ医科大学卒。大阪大学医学部、米ピッツバーク大学医学部などを経て2000年に聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科主任教授に就任。22年から現職。めまいの診断・治療・研究を数多く手掛けている。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。