慢性頭痛の人は季節の変わり目になると症状を起こしやすい。頭痛を和らげるために市販薬を活用している人もいるだろう。しかし、アセトアミノフェンや非ステロイド性消炎鎮痛剤などの痛み止めを服用しても、頭痛が治まらなくなって、月の半分以上も苦しむことがある。その原因となる「薬剤の使用過多による頭痛」(薬物乱用頭痛)に注意が必要だ。
「薬物乱用頭痛は、アセトアミノフェンや非ステロイド性消炎鎮痛剤などの鎮痛薬を月に15日以上、トリプタン、エルゴタミン製剤、カフェインと鎮痛薬の合剤は10日以上服用して起こります。薬物乱用頭痛がなぜ起こるのか、詳しいメカニズムはよくわかっていません」
こう解説する湘南慶育病院(神奈川県藤沢市)の鈴木則宏院長は、「頭痛外来」で薬物乱用頭痛の患者を数多く救っている。
「薬物乱用頭痛は、片頭痛と緊張型頭痛の人だけに起こります。腰痛などほかの痛みで鎮痛剤を服用しても起こりません。いわば『頭痛持ちの頭痛』といえます」
片頭痛の症状は、こめかみの辺りの拍動を伴う痛みで、身体を動かすと痛みが増すのが特徴だ。一方、緊張型頭痛は、頭をギュッと締め付けられるような痛みで、後頭部から首にかけて痛みが走りやすい。
片頭痛の場合は、チカチカとした光が見える閃輝暗点(せんきあんてん)などの前兆があるので、「頭痛が始まる前に薬を飲んでおこう」と、市販の鎮痛薬を活用している人がいる。緊張型頭痛もストレスや長時間継続する姿勢など、痛みが生じやすい状況を把握している場合は、「痛むのはいやだから」と予防のために鎮痛剤を服用することがある。結果として、薬の使用回数が増え、「薬を飲んでも頭痛が治まらない」ような薬物乱用頭痛へと移行する。
「薬物乱用頭痛は、片頭痛や緊張型頭痛の特徴的な症状が崩れて頭全体に痛みが広がり、何日経っても治まらない状態へと陥ります。それを改善するには、薬を変えるか、薬の量を減らす治療が重要になります」
薬物乱用頭痛の原因は薬ゆえに、治すには使用していた薬を止めなければならない。一般的に薬の副作用ならば、薬の服用を止めれば症状は軽減される。だが、薬物乱用頭痛では、その下に片頭痛や緊張型頭痛が潜むため、薬の服用を一気に止めれば、激しい頭痛に見舞われてしまう。治療は容易なことではない。
「頭痛持ちと自覚している人は、いつどんなときに頭痛が起こるのか、『頭痛ダイアリー』をぜひつけていただきたい。そのとき、服用した薬も書いておくことが大切です。頭痛外来を受診するときに持参すると、薬物乱用頭痛の原因も突き止めやすくなります」
頭痛ダイアリーは、日本頭痛学会のホームページから無料でダウンロードできる。
鈴木院長による「薬物乱用を防ぐ心得」(別項)も、ぜひ参考にしてほしい。
薬物乱用頭痛を防ぐ心得
□激しい頭痛に見舞われたときには医療機関を受診する
□市販薬を使用するときには、自己判断で月に10日以上使用するのは避ける
□頭痛がなかなか治らないときには、日本頭痛学会の「専門医一覧」(「日本頭痛学会」で検索)を参考に、自宅近くの医療機関を受診する
□薬の服用方法は医師の指示に従うこと。自己判断で服用回数を増やすのはNG
□「頭痛ダイアリー」をつけて自分の頭痛の傾向を知り、医師と二人三脚で克服することを目指す