室内の湿度が保たれているはずなのに、肌がカサカサすることはありませんか? 放っておくとかゆくなり、かいてしまうと赤くかゆみが増す、といったことにつながります。「かゆみが止まらない」肌の状態は、なぜ起こるのでしょうか。「肌のかゆみ」の改善について、東邦大学皮膚科学講座教授の石河晃先生に聞きます。
「皮膚の表面(表皮)は皮脂の膜(皮脂膜)によって、①外部の刺激が内側へ入るのを防ぐ②角質層の水分が外へ漏れないようにする働きがあります。つまり、肌を守るために皮脂膜は重要なのです。しかし、加齢とともに皮膚の分泌量が減り、皮脂膜も破綻しやすいのです」
バリア機能の柱となる「皮脂膜」が減ると、肌は乾燥して表面の角質層がダメージを受けます。その結果、外部のホコリや花粉、衣類などの刺激をダイレクトに受け、肌のかゆみと炎症を引き起こすのです。中には、すでに、カサカサした肌に保湿剤をぬっている方もいるでしょう。顔を洗った後には、化粧水や乳液をつけて保湿。それでもかゆくなってしまうことにも、皮脂膜に関係しています。
「スキンケアをご存じの方の肌トラブルは、『洗い過ぎによる皮膚炎』が多い。皮脂欠乏性湿疹といいます。皮脂が少ないのに、洗い過ぎることで皮脂膜が減少し、バリア機能が破綻し湿疹を起こすのです」
女性はメイク落としのクレンジングの後に、洗顔料で顔をゴシゴシ。毛穴詰まりなどをすっきり落とす一方で、大切な皮脂も流れ落ちています。男女とも皮脂欠乏性湿疹を防ぐには、「洗い過ぎない」「洗った後は保湿剤で肌の表面を保護する」のがポイントです。
「顔は基礎化粧品やファンデーションでも、皮膚の表面をカバーすることが可能です。男性でも、顔は保湿を意識する方が多いのですが、身体は忘れがちです。中年期になったら、全身の保湿も忘れないようにしましょう」
背中や腰、すねなどが乾燥肌で、バリア機能がなくなると、衣類でこすれることでかゆみを引き起こします。皮脂膜をサポートするために、「風呂上がりの保湿剤」を習慣化しましょう。
「保湿剤はクリームタイプや泡タイプもあります。肌トラブルがあって保湿剤の使い方がわからないときには、近くの皮膚科にご相談ください」
入浴中の洗い方にも注意が必要です。ナイロンタオルでゴシゴシ肌をこすると、皮脂膜がダメージを受けます。「手で洗うのが基本」。泡立つソープなどでやさしく洗って、風呂上がりに保湿剤を塗りましょう。
「皮脂欠乏性湿疹とよく似た病気に悪性リンパ腫などもあります。治らない乾燥肌は自己判断せず、皮膚科を受診してください」
正しいスキンケアで加齢によって弱くなる肌のバリア機能を守りましょう。