女性の病気 処方薬 薬乱用の危険性

薬乱用の危険性④~経口避妊薬を長期間使用して乳がん、頭痛薬を無闇に服用すると“薬物乱用頭痛”に

薬乱用の危険性④~経口避妊薬を長期間使用して乳がん、頭痛薬を無闇に服用すると“薬物乱用頭痛”に
病気・治療
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がん治療や生活習慣病治療など、放置すれば命に危険が及ぶ病気は、早期発見・早期治療に越したことはない。ただし、薬には副作用も伴う。抗がん剤の脱毛、吐き気などの副作用は、一般的にもよく知られている。一方、服用し続けていると発がんリスクを高める薬もあるという。

「近年、国内外で乳がん患者さんが増加しています。食生活の変化もさることながら、発生リスクを高める避妊薬や、月経困難症治療薬の長期服用の関与が懸念されているのです」

こう話す国際未病ケア医学研究センター長の一石英一郎博士は、がん検診や治療を数多く行っている。その中の問診で、若い女性が、避妊薬や月経困難症の薬を安易に長期間に渡り服用していることに、驚いたという。

「なぜ経口避妊薬を服用しているか尋ねると、『特に理由はない』と答えた方が少なからずいました。副作用の理解もなく、薬を飲み続けているのです。生理不順でピルを飲み始め、その後、長年避妊薬として服用し続け、乳がんを発症した症例もありました。海外の180万人を対象とした大規模な調査でも、それを裏付ける結果が出始めています」

生理痛に悩む女性は多い。下腹部の強い痛み、吐き気、頭痛、倦怠感など、さまざまな症状に見舞われる。毎月のように重い症状に苦しめられる月経困難症の人も少なくない。医療機関を受診し、処方されるのがピルなどの薬である。乳がんリスク(別項)としても、公になっているのだが、理由もなく漫然と服用し続けている人がいるのだ。

「乳がんリスクがあることを理解した上で、症状軽減のために一時的に使うなど、適正使用を考えていただきたい。知識を持った上で、薬を活用することが大切だと思います。また、生理痛を軽減するには、漢方薬製剤や日常生活の改善も役立つことがあります」

睡眠不足や食生活の乱れ、過度なストレスは、体調不良を後押しすることが知られている。

だが、仕事や家事が忙しいと食生活の改善は二の次になりがちだ。その場しのぎの薬の服用でつらい症状が軽減できれば―と、つい薬に頼りたくなる人も少なくない。そこに落とし穴がある。

「片頭痛の人が頭痛薬を無闇に服用すると、〝薬物乱用頭痛〟を起こすことも問題になっています」

片頭痛の症状を和らげる、あるいは、予防するために、頭痛薬を長期間に渡って服用していると、頭痛が慢性化する。これを薬物乱用頭痛という。

「市販の鎮痛薬を1カ月に15日以上(薬にカフェインが含まれている場合は10日以上)飲んでいないかどうか」が目安となる。

「薬は、適切に使用すれば味方になりますが、乱用すれば怖い敵になります。薬局で処方された薬の説明文や、市販薬の添付文章に、ぜひ一度、目を通していただきたいと思います」

■乳がんリスク

□経口避妊薬の使用
□閉経後の長期のホルモン補充療法
□飲酒などの生活習慣
□閉経後の肥満
□運動不足

※国立がん研究センター「がん情報サービス」から

「健活手帖」 2023-01-20 公開
解説
医師、医学博士
一石 英一郎
国際未病ケア医学研究センター長。医学博士。1965年兵庫県神戸市生まれ。京都府立医科大学卒。京都府立医科大学免疫内科(補体研究・近藤元治元教授)で免疫学などを学び、北陸先端科技大学院大学教授、東北大学大学院医学研究科内科病態学客員教授、同大学先進医工学研究機構客員教授を経て現職。日本内科学会の指導医。米国がん学会の正会員でもある。厚労省温泉入浴指導員。『医者が教える最強の温泉習慣』(扶桑社)など著書多数。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。