薬の副作用はいろいろあるが、複数の薬の成分が合わさると、思わぬ事態を招きかねない。たとえば、高血圧の治療薬として一般的に処方されている「カルシウム拮抗薬」は、胃潰瘍の薬(シメチジン)や水虫の飲み薬(イトラコナゾール)を一緒に服用すると、血圧が下がり過ぎてしまうことがある。
「カルシウム拮抗薬を肝臓で代謝する酵素が、別の薬の成分でも同じ酵素が使われて重複すると、酵素の働きが鈍ってしまうのです。結果、お薬の分解が遅れて血中濃度が上がったままになり、血圧が下がり過ぎる恐れがあるのです。同じ理由から、カルシウム拮抗薬はグレープフルーツジュースも、一緒に飲むことはよくありません」
こう話す一石英一郎博士は、国際未病ケア医学研究センター長として安易な薬の服用に伴う副作用の危険性について、より多くの人に知ってもらうべく啓蒙活動にも力を注いでいる。
「降圧薬同士の組み合わせにも注意が必要です。最近は、作用の異なる薬を1錠にまとめた合剤が処方されるようになりました。利尿薬やARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)の合剤は、腎機能低下で血中のカリウム濃度が上がる『高カリウム血症』を引き起こすことがあります」
薬の数が増えれば副作用のリスクが高まるが、一方で高血圧を放置すれば心筋梗塞や脳卒中のリスクも上がる。1剤で血圧が高いままのときには、2剤、3剤と、作用の異なる薬を組み合わせて服用することはあり得ることだ。
そうした場合、たくさんの薬を飲む手間や飲み忘れを防ぐため、複数の薬剤を1錠にまとめた合剤は便利ともいえる。だが、安易に使用すれば、副作用のリスクが上がることも覚えておこう。
「そもそも生活習慣病は、食生活の見直しでの改善が基本です。薬は補助的に使用するイメージです。安易に薬に頼るのはよくないのです」
薬が怖いことは、この連載でわかっていただけたと思う。ならば、サプリメントはどうか。
青魚に多く踏まれる魚脂のEPAやDHAといったオメガ3脂肪酸は、高血圧の改善・予防が期待されている。加えて、中性脂肪を下げ、血液もサラサラにし、認知機能の低下予防、アレルギー症状の抑制などの作用が考えられている。
「魚を1日100グラム食べれば、高血圧のリスクを下げると報告されています。しかし、サプリメントを薬のように服用することはお勧めしません。思わぬ事象につながりかねないからです」
血液をサラサラにする「ワルファリン」を服用中の人が、EPAやDHAのサプリメントを服用すると、出血しやすくなるといわれる。EPAやDHAにも、血液をサラサラにする作用があるため、「ワルファリン」の働きを増強させてしまうのだ。薬の効果を下げる飲み合わせもある=別項参照。
「いま一度、薬を何のために飲むのか、副作用はなにか、サプリや食品との食べ合わせはどうか。ご自身で考えるようにしましょう」と一石博士はアドバイスする。
■薬の効果を下げるサプリの併用
□ビタミンK(青汁、クロレラを含む)と…ワルファリン(抗凝固剤)
□カルシウムと…ビスホスホネート系製剤(骨粗しょう症薬)、テトラサイクリン系抗菌剤やニューキノロン系抗菌薬など(抗生物質)
□マグネシウムと…ビスホスホネート系製剤(骨粗しょう症薬)、テトラサイクリン系抗菌剤やニューキノロン系抗菌薬など(抗生物質)
□鉄と…タンニン酸アルブミン(下痢止め)、ビスホスホネート系製剤(骨粗しょう症薬)、メチルドパ(降圧薬)、テトラサイクリン系抗菌剤やニューキノ ロン系抗菌薬など(抗生物質)
□中性アミノ酸と…レボドパ(抗パーキンソン病薬)
※厚生労働省「健康食品の正しい利用法」から