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薬乱用の危険性③~サプリメントと治療薬の相互作用に注意を

薬乱用の危険性③~サプリメントと治療薬の相互作用に注意を
病気・治療
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薬の副作用はいろいろあるが、複数の薬の成分が合わさると、思わぬ事態を招きかねない。たとえば、高血圧の治療薬として一般的に処方されている「カルシウム拮抗薬」は、胃潰瘍の薬(シメチジン)や水虫の飲み薬(イトラコナゾール)を一緒に服用すると、血圧が下がり過ぎてしまうことがある。

「カルシウム拮抗薬を肝臓で代謝する酵素が、別の薬の成分でも同じ酵素が使われて重複すると、酵素の働きが鈍ってしまうのです。結果、お薬の分解が遅れて血中濃度が上がったままになり、血圧が下がり過ぎる恐れがあるのです。同じ理由から、カルシウム拮抗薬はグレープフルーツジュースも、一緒に飲むことはよくありません」

こう話す一石英一郎博士は、国際未病ケア医学研究センター長として安易な薬の服用に伴う副作用の危険性について、より多くの人に知ってもらうべく啓蒙活動にも力を注いでいる。

「降圧薬同士の組み合わせにも注意が必要です。最近は、作用の異なる薬を1錠にまとめた合剤が処方されるようになりました。利尿薬やARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)の合剤は、腎機能低下で血中のカリウム濃度が上がる『高カリウム血症』を引き起こすことがあります」

薬の数が増えれば副作用のリスクが高まるが、一方で高血圧を放置すれば心筋梗塞や脳卒中のリスクも上がる。1剤で血圧が高いままのときには、2剤、3剤と、作用の異なる薬を組み合わせて服用することはあり得ることだ。

そうした場合、たくさんの薬を飲む手間や飲み忘れを防ぐため、複数の薬剤を1錠にまとめた合剤は便利ともいえる。だが、安易に使用すれば、副作用のリスクが上がることも覚えておこう。

「そもそも生活習慣病は、食生活の見直しでの改善が基本です。薬は補助的に使用するイメージです。安易に薬に頼るのはよくないのです」

薬が怖いことは、この連載でわかっていただけたと思う。ならば、サプリメントはどうか。

青魚に多く踏まれる魚脂のEPAやDHAといったオメガ3脂肪酸は、高血圧の改善・予防が期待されている。加えて、中性脂肪を下げ、血液もサラサラにし、認知機能の低下予防、アレルギー症状の抑制などの作用が考えられている。

「魚を1日100グラム食べれば、高血圧のリスクを下げると報告されています。しかし、サプリメントを薬のように服用することはお勧めしません。思わぬ事象につながりかねないからです」

血液をサラサラにする「ワルファリン」を服用中の人が、EPAやDHAのサプリメントを服用すると、出血しやすくなるといわれる。EPAやDHAにも、血液をサラサラにする作用があるため、「ワルファリン」の働きを増強させてしまうのだ。薬の効果を下げる飲み合わせもある=別項参照。

「いま一度、薬を何のために飲むのか、副作用はなにか、サプリや食品との食べ合わせはどうか。ご自身で考えるようにしましょう」と一石博士はアドバイスする。

■薬の効果を下げるサプリの併用

□ビタミンK(青汁、クロレラを含む)と…ワルファリン(抗凝固剤)
□カルシウムと…ビスホスホネート系製剤(骨粗しょう症薬)、テトラサイクリン系抗菌剤やニューキノロン系抗菌薬など(抗生物質)
□マグネシウムと…ビスホスホネート系製剤(骨粗しょう症薬)、テトラサイクリン系抗菌剤やニューキノロン系抗菌薬など(抗生物質)
□鉄と…タンニン酸アルブミン(下痢止め)、ビスホスホネート系製剤(骨粗しょう症薬)、メチルドパ(降圧薬)、テトラサイクリン系抗菌剤やニューキノ ロン系抗菌薬など(抗生物質)
□中性アミノ酸と…レボドパ(抗パーキンソン病薬)

※厚生労働省「健康食品の正しい利用法」から

「健活手帖」 2023-01-19 公開
解説
医師、医学博士
一石 英一郎
国際未病ケア医学研究センター長。医学博士。1965年兵庫県神戸市生まれ。京都府立医科大学卒。京都府立医科大学免疫内科(補体研究・近藤元治元教授)で免疫学などを学び、北陸先端科技大学院大学教授、東北大学大学院医学研究科内科病態学客員教授、同大学先進医工学研究機構客員教授を経て現職。日本内科学会の指導医。米国がん学会の正会員でもある。厚労省温泉入浴指導員。『医者が教える最強の温泉習慣』(扶桑社)など著書多数。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。