高血圧は、心筋梗塞や脳卒中、心不全やフレイル(心身の虚弱)につながるため、放置してはいけないことを紹介してきた。すでに血圧上昇を起こしやすい冬まっただ中で、どのように改善・予防を心掛ければよいのか。
「できることからはじめていただきたいと思います。たとえば、お弁当などを購入するときに、栄養成分表示の食塩相当量をチェックし、1グラムでも少ない方を選びましょう」と東京都健康長寿医療センターの原田和昌副院長はアドバイスする。
高血圧の人の1日の塩分摂取量の理想は1日6グラム。これまで1日12グラム食べていた人が6グラムに減らすと、血圧が6mmHg程度は下げることが可能と考えられている。もちろん、塩分ゼロというのは身体によくない。できる範囲で少しずつ減らすことが大切だ。
「1日1グラムの減塩からスタートしましょう。減塩に加えて、太っている方は減量も重要です。筋肉を鍛えることも心掛けましょう。ただし、方法には注意が必要です」
ダイエットのための運動習慣として、ウオーキングに取り組む人はいるだろう。余暇を利用し1時間程度歩けば、身体活動量が上がって減量に役立つ…と言いたいところだが、必ずしもそうではない。
「ウオーキングのような有酸素運動を1時間連続すると、より食欲が増して食べる量が増えてしまうことがあるのです。有酸素運動に加えて、筋トレなどのレジスタンス運動を組み合わせるのがコツです」
ちなみに、原田副院長自身は1日100回のスクワットを実践しているという。ただし、運動習慣がない状態でスクワットに取り組むと、10回でもきつく100回へとの到達は難しい。無理して行えば、膝を痛めることにもつながりかねない。
「私が行っているのは、ゆるいスクワットです。テレビを見ながらの『ながらスクワット』。膝を痛めない程度に、腰を落としてまた上げる。回数を小分けにして、無理のない範囲ではじめてみてください」
運動習慣は、単にダイエットというだけでなく、血管や心臓を守ることに役立ち、高血圧の改善に寄与する。「1日1グラムの減塩」と「ながらスクワット」から、食生活改善の一歩を踏み出そう。
「食生活を見直すことで、降圧薬などに頼らなくても血圧管理は可能です。すでに高血圧で心筋梗塞や脳卒中の経験がある方、あるいは、心不全と診断されている方は、薬を上手く使いながら、食生活を見直しましょう」
血圧上昇を促す真冬の寒暖差を防ぐのは難しいが、寒暖差に負けない身体は、食生活の見直しで可能だ。原田副院長の血圧改善のコツ(別項)も参考に、さっそく取り組もう。
原田和昌副院長による血圧改善のコツ
- 減塩を心掛け、外食では栄養成分表示の食塩相当量をチェック
- 血圧改善の食事療法「DASH食」(果物、野菜、ヨーグルト、魚、ナッツ、全粒穀物など)を意識する
- 無理のない範囲で、1日30分の有酸素運動+スクワットなどの筋トレを心掛ける
- 睡眠不足の解消
- 過度なストレス軽減のため、ストレス発散を心掛ける
- 過度の飲酒は控える