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【ベストセラー健康本】『108歳の現役理容師おばあちゃんごきげん暮らしの知恵袋』

【ベストセラー健康本】『108歳の現役理容師おばあちゃんごきげん暮らしの知恵袋』
予防・健康
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理容師歴94年。今年11月10日にはいつも通り店に立ち、108歳の誕生日を元気に迎えた箱石シツイさん=写真(栗栖誠紀撮影)。4年前には東京五輪で聖火ランナーもつとめ、「人生100年時代」を体現する箱石さんが、長い人生の楽しみ方を届けてくれ『108歳の現役理容師おばあちゃんごきげん暮らしの知恵袋』(宝島社刊, 1430円)が話題だ。

現役理髪師の箱石シツイさん (栗栖誠紀撮影)

波乱万丈な人生の歩み

箱石さんのこれまでは、まさに波乱万丈だった。12歳で村長宅に奉公、14歳で上京して理容師修業したが、空襲で自宅を消失。夫は戦死、長女は0歳で重度の脳性まひに。心中未遂や借金など壮絶な人生を振り返ると、現在の「ごきげん暮らし」がより際立つ。

自然体で生きる日常

箱石さんが70歳過ぎから始め35年以上毎日行っているという30の体操や、30年間愛飲するお茶の紹介なども記されているが、「このやり方がすごいのです、というようなテキパキとした話はないんですね」と記すように、健康長寿のためのハウツー本ではない。自然体で生きてきた、等身大の箱石さんの日常が綴られる。

母からの教え「三ず」の精神

理容師という仕事柄もあってか、柔らかで温かく、親しみやすさが行間から伝わる。読み進むほどに、箱石さんのように楽しく過ごしていけそうな気がしてくる。中でも箱石さんが幼いころから母親に言い聞かされてきた教え「三ず」の精神を心がけながら日々を送っているという。

「三ず」とは、「ひるまず」「うらやましがらず」「あらそわず」という家訓である。ひるまず、勇気を持つことで、道を切り開くことができ。ねたまず、自分だけができることを身につけていく。そして、争わないことで、わだかまりや傷をつくらず、穏やかに生活をおくれるという。

忙しい日々の中での心構え

箱石さんはこう語る。「昨年秋に、テレビで私のことを紹介していただきまして、著述家・編集者の石黒謙吾さんが、その番組を見てくださって、この本のお話を頂きました。14歳で栃木からひとり上京して理容師の世界に入って、日々働いて働いて働いて気づいたら108歳になったという感じなんです。戦争で夫を亡くしてから、幼かった子供2人を無我夢中で育てたことが、長生きにつながったような気がしています」

「三ず」を心に生きる

しっかり食べて、歩いて、体操して、よく眠る。当たり前のことだがその一つ一つをきちんと丁寧にやること。「三ず」とともに、箱石さんが言う通りの日々を送ってみようかなと心がけたくなる。ますます、ごきげんでいてほしいと思える、そんな一冊だ。 

 

シツイさんの長生き毎日体操

【座ったままで】おもに上半身、首や肩、腕など、起きてすぐ固まっていそうなところを、伸ばしたり回したり、肩を上下に動かしたり、首の後ろを指で押すなどしていく

【ベッドで】足首や膝の調子を、さわったり動かしたりして確認。座りながら足を上下に動かしたり膝や足首周辺をマッサージ

【立って】どこかにつかまって直立、目線は正面にし、足を上げたり、かかとやつま先を上げおろしする

※著書から抜粋

執筆者
ジャーナリスト
田幸 和歌子
医療ジャーナリスト。1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経て、フリーランスのライターに。「週刊アサヒ芸能」で健康・医療関連のコラム「診察室のツボ」を連載中。『文藝春秋スーパードクターに教わる最新治療2023』での取材・執筆や、健康雑誌、女性誌などで女性の身体にまつわる記事を多数執筆。