がん 闘病記 前立腺がんステージ4奮闘記

前立腺がんステージ4奮闘記(4)~高額療養費…どうすればいいのか?

前立腺がんステージ4奮闘記(4)~高額療養費…どうすればいいのか?
コラム・体験記
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末期がんの宣告を受けたときの精神状態

長田昭二氏は20年以上にわたって医療ジャーナリストとして活動しており、前立腺がんのステージ4と宣告され、治療を受けながらも精力的に取材・執筆活動を続けている。長田氏が実体験に基づき、読者に伝えたいことをお届けする。

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がん、それも治癒の見込みのない末期がんと宣告されたとき、人はどんな精神状態になるのだろう。悲しみに打ちひしがれ、泣き崩れるものなのだろうか。

筆者の場合は淡々としたもので、悲嘆にくれることもなく、涙を流すこともなかった。病院からの帰り道、思っていたのは「今後の仕事はどうしようか」「親や親戚にはどう伝えようか」、そして「これからの医療費を払えるのだろうか」という不安だった。近い将来の死を宣告されながら、最大の心配事は「お金」だったのだ。

治療費への不安

筆者の年間平均売上高は800万円前後。この金額から事務所経費や交通通信費、交際費などの経費を差し引いた額が「所得」となり、そんな微々たる所得で、がん治療にかかる医療費を払えるのかという不安があった。

結果として現在は支払いができている。前立腺全摘術を受けた2021年に支払った医療費の自己負担額(国保・3割負担)の総額は191万2289円。そのうち高額療養費の限度額超過分として39万2837円が戻ってきたので、実際の自己負担額は151万9452円となった。

高額療養費制度の活用

高額療養費制度とは、一度自己負担額を満額支払った後、健康保険組合に申請することで、限度額を超えて支払った分が戻ってくる制度だ。筆者の場合、高額療養費の申請が遅れたため2021年の返戻金が少なくなったが、翌年にはその分が戻ってきている。

また、事前に「健康保険限度額適用認定証」をもらっておくと、病院の窓口で限度額以上を支払う必要がなくなるが、筆者はあえて使わず、クレジットカードで全額を支払い、後から申請して超過分を戻してもらう方法を取っている。この方法では、クレジットカードのポイントが加算され、さらに利点がある。

生命保険と社会保障制度の重要性

加入していた生命保険が、がんと診断された際に100万円の一時金を支払ってくれるタイプだったことも、大きな助けとなった。このような制度が整備された国に生まれたことに感謝しつつ、決してラクではないが、がん治療の医療費は支払えていると筆者は実感している。

高額療養費の見直しが議論されているが、社会保障制度の存在が、筆者のような人々にとってどれほど重要で助けとなるかを強く感じている。
 

解説・執筆者
医療ジャーナリスト
長田 昭二
医療ジャーナリスト。日本医学ジャーナリスト協会会員。1965年、東京都生まれ。日本大学農獣医学部卒業。医療経営専門誌副編集長を経て、2000年からフリー。現在、「夕刊フジ」「文藝春秋」「週刊文春」「文春オンライン」などで医療記事を中心に執筆。最新刊『末期がん「おひとりさま」でも大丈夫』(文春新書)。