スロットで認知症予防を? 畑違いの提案
“世界の整体王”こと、澤田大筰氏のもとに、やや畑違いと思わせる相談が寄せられた。それは高齢者の認知症予防向けにスロットマシンを有効活用できないかというものだった。
「ギャンブルに熱くなれば、晩年の人生が破綻するのでは?」と心配する人もいると思うが、澤田氏は、「スロットといっても、もちろん賭け事ではなく、遊びで導入することを目的としています」と話す。
澤田氏が認知症予防に携わる理由
澤田氏に白羽の矢が立ったのは、彼がデンマークのオーフス大学で認知症と運動の研究に携わっている専門家であることが一番の理由だ。その上、医学博士であり運動機能を専門とする柔道整復師、公認心理師という2つの国家資格を持つ実績が評価された。
「海外の研究などで手と頭などを同時に使う動作は認知症予防につながるということが証明されています。その点、スロットは手と目、頭を同時に使うため、うってつけのツールになります」と澤田氏は語る。
スロットを使った予防プログラム
澤田氏の監修の下、高齢者施設などにスロット導入を計画しているのは、パチスロ事業トップメーカーのサミー(本社・東京都品川区)。機種はデジタルスロットで、アナログ機械の打感を再現しつつ、画面にはストーリーが流れる台もある。さらに足も使ってプレーすることで全身を使った運動につながるのが特徴だ。
「昔見た映画やテレビ番組などを見ることで認知症予防につながるという研究があります。スロットでも(ゲーム内で)昔見たようなストーリーが流れると、認知症予防が期待できます。また、趣味を持つことで認知症の発症リスクを低下させる可能性も示されています」(澤田氏)
複合的なアプローチの有効性
今秋、澤田氏の考えを補強するような神戸大学などのグループによる研究が発表された。運動、脳を鍛えるゲーム、栄養管理、生活習慣病の管理の4つを組み合わせた90分のプログラムを週1回、18カ月続けた高齢者グループは、記憶力や注意力のテストスコアが約4割向上したという。
単純に脳を鍛えるゲームとしてみてもスロットは有効であることが示唆されている。
楽しく継続できる予防の重要性
一方、昨年保険適用された認知症治療薬は症状の進行を遅らせる効果はあるものの、根治につながるものではない。全国の65歳以上の高齢者のうち、7人に1人が認知症とされ、健康長寿の人生には大きな障害となっている。
「認知症になる前に対策を始めることで認知症になる確率が低下するという研究があります。スロットのように楽しく遊びながら認知症予防を行えるツールを活用することで、継続的に予防に取り組んでほしいですね」と澤田氏はアドバイスする。