ダイエット エイジングケア

老化スピードを抑える「ロカボ」生活始めよう

老化スピードを抑える「ロカボ」生活始めよう
エイジングケア
文字サイズ

糖質制限が注目される理由

糖質は私たちの体に不可欠なエネルギー源となる栄養素である。しかし、取り過ぎると高血糖を招き、肥満や糖尿病、動脈硬化などさまざまな生活習慣病の要因に。糖質を緩やかに制限する食事法である「ロカボ」は、食後高血糖の上昇を抑えることでメタボ対策のみならず、健康的なダイエットや老化のスピードを遅くする可能性も期待できる。ロカボ提唱の第一人者、北里大学北里研究所病院院長補佐・糖尿病センター長の山田悟氏に聞いた。

糖質の役割と健康への影響

日常生活には、ご飯、パン、麺類、芋類、カボチャ、大豆以外の豆類、果物、菓子など糖質を多く含む食品があふれている。糖質は体内に入ると分解され、動物が活動するためのエネルギー源の1つであるブドウ糖になる。ブドウ糖は血液に乗って全身を巡り、細胞でエネルギーとなる。

血液中のブドウ糖を血糖といい、その濃度が血糖値。この血糖値を上げるのが糖質となる。

「人の体内には血糖値が上がっても下げる働きが備わっていますが、実は加齢によってその働きが鈍くなります。年齢を重ねると血糖値を下げるインスリンの分泌が緩慢になってしまうのです。運動不足で筋肉量が少なくてもその傾向が強くなります」

余剰糖質が引き起こす問題

エネルギーとして使い切れずに余ったブドウ糖は—。「脂肪細胞に回され、脂肪に変わり、体の中に蓄えられてしまいます。こうして過剰な糖質の摂取は血糖値を上げ、肥満、糖尿病、動脈硬化などにつながっていくのです」

では、どうすればいいのか。

「血糖値は糖質を食べたときだけ上がります。基本的に脂質やタンパク質、その他の栄養素を食べても血糖値は上がりません。だったら糖質の摂取量を減らし、毎回の食事に含まれる糖質の量をエネルギーとして使い切れる適正な量にしようというのがロカボです。食後血糖値を低く抑えることができれば、肥満防止になり、ロカボは適正体重に落ち着くダイエットになります」

ロカボの具体的な実践方法

ロカボは糖質を完全に抜くのではなく、毎食ある程度は食べ、緩やかに糖質を制限する食事法だ。毎食の糖質量を20~40グラムに抑え、間食としてスイーツも10グラムまでなら摂取可。1日の糖質量を70~130グラムに収める。

「1回の食事の糖質量が40グラム以下であればほとんどの人の血糖値の上昇を抑えられます」

先にタンパク質や脂質、食物繊維を、最後に糖質を取るのが効果的。糖質も血糖値を上げないレベルで摂るようにしたい。

栄養バランスと糖質管理の重要性

「理想的なタンパク質の量は体重1キロあたり1.6グラムなので、60キロの人なら96グラムのタンパク質を摂取するといいでしょう。油はTPOに応じてごま油やオレイン酸を含むオリーブ油、脂質が豊富な青魚や肉、ナッツを積極的に摂るようにしたいですね」

一般にダイエットのためのカロリー制限がいいと思われているが…。

「食べている食品やメニューが変わるのに、昨日も今日も同じカロリーを摂取するのは難しく、続けられません。ロカボは糖質だけ管理すればいいので取り組みやすく続けやすい、何よりおなかいっぱい食べても適正カロリー摂取になります」

糖化反応と老化の関係

血糖値は1日のうちに何度も変動するが、3食ロカボで食べていると上下動が少なく、血糖変動を最小限にできるという。反対に、食後高血糖を起こす食事をすると、血糖値の上下動が大きく、体の酸化ストレスが増加したり、糖化反応が起きて、老化につながってしまう。

糖化反応の仕組みをもう少し詳しく説明しよう。過剰に取り込んだ糖質により高血糖状態になると、エネルギーとして使われなかった糖が体内のタンパク質とくっつき、そのタンパク質が劣化してAGEs(老化物質)が生成されるのだ。

AGEsを防ぐ糖質制限の効果

「AGEsが蓄積すると、各組織のタンパク質が変性し、機能低下や炎症が引き起こされます。肌や髪、骨などに含まれるコラーゲン(タンパク質の1種)に糖化が起こると、コラーゲンは堅くなり弾力を失い、肌のはりの低下やしわが定着しやすくなります。さらに髪の毛のこしも失われ、骨ももろくなってしまいます」

この糖化を防げば、老化のスピードを遅らせる効果が期待できる。「緩やかな糖質制限を続けることで過剰な糖質を抑え、血糖値が上昇しにくくなり、AGEsの産生を効率よく防ぐことができます」

山田悟(やまだ・さとる)

北里大学北里研究所病院院長補佐・糖尿病センター長、食・楽・健康協会代表理事。日本糖尿病学会糖尿病専門医。1970年、東京都生まれ。慶應義塾大学医学部卒業。2007年、北里大学北里研究所病院糖尿病センター長に就任。2013年、一般社団法人「食・楽・健康協会」を立ち上げ、ロカボの普及に尽力。著書に『運動をしなくてもみるみる血糖値が下がる食べ方大全』『糖質疲労』など。

執筆者
医療ジャーナリスト
宇山 公子
静岡県出身。会社員、新聞記者を経てフリーライターに。介護、健康、医療、郷土料理、書評など執筆。日本医学ジャーナリスト協会会員。