現在89歳。81歳でiPhone用ゲームアプリ「hinadan」を開発し注目を集めた世界最高齢のプログラマーの若宮正子さん=写真=が届ける『やりたいことの見つけかた 89歳、気ままに独学』(中央公論新社刊、1650円)は大いに示唆に富む。年齢を重ねてなお学ぶということの楽しさ、勇気を与えてくれる一冊だ。
自由な学びのすすめ
〈いくつになってもお勉強しましょうよ。〉
冒頭のこの呼びかけに、なんともいえない心強さと説得力を感じる。
タイトルにも「気まま」とあるように、学ぶといっても堅苦しく考えず、気楽に楽しみながらという若宮さん流のスタンスが終始貫かれている。それは各章ごとのタイトルにも表れていて、
「飽きたらやめちゃえ」「英語は間違ってナンボ」「目的はワクワクすること。ノルマを課しちゃダメ」…などなど。ポジティブな気分でページを開き読み進めていくことができる。
学びの中で得られるもの
こんなエピソードがある。若宮さんが若い頃に習ったという日本舞踊。母親には「月謝の無駄遣い」と言われ、踊り自体は身に付かなかったそうだが、長唄、常磐津といった舞踊音楽の知識は身についたという。
「日本舞踊自体がうまくならなかったとしても、得るものはあるんです」
構えなくていい、無理にがんばらなくていい。読むうちに心が軽くなる。自分も新しいこと始めてみようかなという気持ちにさせてくれる。
89歳の挑戦が示す希望
いま学びたい、始めたいと思うものがなくとも、人生100年と言われるこの先の道のりを、若宮さんが一緒に歩いてくれそうな気がする。若宮さんはこう語る。
「毎日、忙しくしています。今89歳で超多忙です。きょうは九州、あすは北海道と、講演のお誘いがあると行ってみたくなりますから」
そして、こう続ける。
「私はスマートフォンやパソコンが苦手だし、趣味もやりたいことも見つからない…としょんぼりする方もいます。でも、気ままに、遊び感覚でいいと思います」
飽きてもいい、気楽に挑戦
「何がなんでも習得してみせるなんて意気込んではダメ。飽きたらやめちゃえばいいのです。怖がらずに飛び込んでみると、わくわくすることに出会えます。そこで友だちが見つかれば、しめたものです。この本には、そのためのヒントになりそうなことを私の経験から書いてみました。少しでもお役に立てましたら幸いです」
年をとっているから無理、できない、そんな考え方を捨て、若宮さんの言うように、好奇心のままに飛び込むことができればそれでいい。背中を押してもらった気がした。
独学の基本は「読書」—若宮正子さん流おすすめ本
『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎)…「人間はどうあるべきか」ということを問いかけてくれる、それまで出会った本とひと味違った本
吉川英治や司馬遼太郎などの歴史小説。歴史上の人物がいきいきと頭の中で動き始め、時代背景も分かってきた
『波』『本の窓』『ちくま』など読書情報誌は100円程度で買える、濃くて読みごたえのある冊子
※本書から抜粋・要約