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老化スピードは自分でコントロールできる!

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老化速度とその個人差

近年、世界的に老化速度についての研究が進んでいて、人によって老化のペースにかなりの差があり、老化がピークとなる年齢もあることが分かってきた。今、世界で注目されているPoA「ペース・オブ・エイジング」(老化速度)についてイシハラクリニック(東京)の副院長、石原新菜医師に聞いた。

老化ペースと見た目の違い

同じ年齢でも若く見える人と老けて見える人がいる。女性なら化粧や服装のせいもあるが、それだけではないそうだ。 「老化速度には個人差があり、1年間にPoAが0.4歳しか進まない人がいる一方、2.44歳も進む人がいます。10年、20年となると、その差は歴然としてきます」

老化速度に関する調査結果

米デューク大学は、ニュージーランドのダニーデン地方で(1972年から73年に生まれた1037人の26歳から45歳になるまで20年間を健康追跡調査(HbA1c値や心肺機能など生体データ19種類から老化ペースを算出)した(2021年)。 その結果、老化(生物学的年齢)の遅い人は1年間に0.4歳しか年をとらないのに対し、速く進む人は2.44歳も年をとっていた。その差は1年間で6倍にも。老化ペースが速い人は、見た目のみならず、歩く速度、脳及び認知機能も老化していた。

双子研究でわかる生活習慣の影響

南デンマーク大学の双子に関する研究(2009年発表)では、70歳以上の双子、913組1826人を対象に、見た目と寿命の関係を調査。対象の双子の写真を41人の男女に見せ、何歳に見えるか判定してもらった結果、双子のうち、老けて見える方が先に亡くなり、若く見える方が身体機能や認知機能も高く、細胞の老化がゆっくりで、長生きしていることがわかった。

生活習慣が見た目を左右する

「双子で同じ遺伝子を持っていても、それぞれの睡眠やストレス、食事、運動など生活習慣の違いで見た目が変わってしまうのです。老けて見えるというのは肌の状態のことだけではなく、“体のさび”といわれる酸化や“こげ”といわれる糖化が進み、血管や内臓も老化しているということ。外が老けているということは、中も老けているということなのです」

老いを感じる3つのピーク年齢

「老いを感じるピークは人生で3回あります。最初は34歳、次が60歳、そして78歳です」 2019年に発表された米スタンフォード大学の研究では、老化が3段階で進むことが示されている。18歳から95歳までの4263人を研究対象者として、その血液中の2925種類のタンパク質を調べた結果、34歳、60歳、78歳をピークにタンパク質の急な増減が起きていた。

PoAに取り組むべき年齢

「双子の研究からもわかるように、寿命は遺伝の影響より、生活習慣の影響のほうが大きいのです。老化タンパク質の変化の1回目のピークは34歳なので、30代は一番PoAに取り組むべき世代なのですが、30代を過ぎたら、もうだめかというとそうではない。60歳、78歳にも変化のピークがありますから、どの世代でもPoAに対処する取り組みができ、効果が見られるのです」

足腰を鍛え、黄金期を迎える

「女性はつらい更年期を乗り越えると50代は黄金期がくるといわれていますが、男性も同様に50代は黄金期です。黄金期であるためには足腰が丈夫であることが大事ですから、運動することです。年齢とともに筋肉量は落ち、同時に代謝も下がります。太りすぎや、高脂血症や糖尿病などの生活習慣病になりやすく、体も冷えていきます。そうすると動脈硬化や心筋梗塞、認知症などが始まるので、とにかく運動習慣を身につけることが重要です」

運動を習慣化するための工夫

2023年度スポーツの実施状況等に関する世論調査(スポーツ庁)によると、1日30分以上の運動を週2日以上1年以上継続している割合は、女性は30代13%、40代18%、50代21%、60代32%。男性は30代25%、40代27%、50代26%、60代32%。総じて、運動を習慣にしている人が少ない。 「1日に20~30分歩くことから始めましょう。3分早歩きして、3分普通の歩き方をする。合計6分を1セットとして、1日に3から5セットすると18分から30分歩くことになります。あとは、片足立ち。左右1分ずつで、約53分歩いたのと同じ負荷がかかります。これをだんだん増やして3セット行えるようになるとさらにいいですね」

スクワットで筋肉量を保つ

スクワットも効果的だという。「イスの前に立ち、肩幅くらいに脚を開き、イスに座ろうとする寸前までお尻を落とし、また立ち上がる。後ろにイスを置いているので、転ぶ心配なく行えます。1日30回ぐらいがいいでしょう。続ければ少しずつ筋肉がつき、骨粗鬆症の予防にもなります」

腸内環境の改善も鍵

腸内環境は老化にも大きく関わっている。「腸内の悪玉菌が増えると毒素で腸に炎症が起き、全身の炎症につながります。乳酸菌やビフィズス菌、酵母菌、麹菌などいろいろな菌をお腹で育てるイメージで善玉菌を摂取しましょう」

バランスの良い食事と発酵食品

「タンパク質は、動物性、植物性のバランスを取る。魚は血液がさらさらになる成分がありますが、肉は脂で血液がどろどろになりがちなので、魚と肉は半々ぐらいの割合で食べること。抗酸化作用が高いイソフラボンを含む大豆製品で発酵食品の納豆やみそ汁を。善玉菌を増やす発酵食品は、ぬか漬けやキムチ、カルシウムも同時に摂取できるチーズも。善玉菌の餌となる食物繊維のキノコや海藻、ゴボウなどを一緒に取りましょう」

質の良い睡眠と冷え対策

さらに、睡眠も大切。「睡眠は体の修復をする時間ですから、6時間以上はとりたいです。昼間仮眠をするなら15~30分。冷えも血流が悪くなるので避けたい。風呂はバスタブにつかる。腹巻きもいいですね。私は昼間も寝るときもヒートテックの腹巻きをしています。ショウガをこまめに摂取すると体を温める作用があります」

年齢に関係なく老化対策を

老化を自分でコントロールする気構えでいれば人生の楽しさが増す。「もう年だから…ではなく、何歳からでも、生活習慣を変えて老化のスピードを落とすことはできます。続けることで健康で長生きできます」


PoA度(老化速度タイプ)チェックリスト

  • 時間に追われて著食を週に3回以上食べられないことがある
  • 朝食は菓子パンや甘いドリンクなど簡単なものになりがち
  • 揚げ物を週に5回以上食べる
  • ご飯、パン、麺類など炭水化物が多い食品をよく食べる
  • 夜の外食が週に3日以上ある
  • ファストフードを週に3回以上食べる
  • 魚料理より肉料理を選ぶことが多い
  • ヨーグルトや納豆などの発酵食品はあまり食べない
  • 野菜、きのこ、海藻など食物繊維が多い食品はあまり食べない
  • チョコレートやお菓子などついつい間食しがち
  • デザートは別腹だ
  • お酒を飲むために食事の量や回数を減らすことがある
  • 食べないダイエットや単一食品ダイエットをすることがある

【チェック数による診断結果】
0~2個 PoA度ゆっくり 見た目は「若見え」
3~4個 PoA度普通 見た目は「年相応」
5個以上 PoA度速い 見た目は「老け見え」

石原新菜(いしはら・にいな)

医師。1980年、長崎県生まれ。イシハラクリニック(東京都江東区)副院長。現在、同クリニックで主に漢方医学、自然療法、食事療法により病気の治療にあたる。著書は『病気にならない蒸し生姜健康法』『体を温めると子どもは病気にならない』など多数。テレビ、ラジオ、講演でも活躍中。

執筆者
医療ジャーナリスト
宇山 公子
静岡県出身。会社員、新聞記者を経てフリーライターに。介護、健康、医療、郷土料理、書評など執筆。日本医学ジャーナリスト協会会員。