アレルギー 要注意!「オートミール症候群」

要注意!「オートミール症候群」(1)~原因不明のアナフィラキシーの“正体”とは?

要注意!「オートミール症候群」(1)~原因不明のアナフィラキシーの“正体”とは?
予防・健康
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秋はハウスダストによるアレルギー症状を起こしやすい。夏場に多量に発生したダニの死骸やフン、チリなど、ハウスダストが室内に増えやすいからだ。一方、乾燥食品のオートミールの中で増殖する虫でも、ひどいアレルギー症状を起こすことが新たにわかった。この研究を行った東邦大学医療センター大橋病院皮膚科の福田英嗣診療部長と松本千夏医師に話を聞いた。

オートミールで発症したアレルギー

今年8月、開封したオートミールの袋の中で増殖した昆虫・チャタテムシ目ヒラタチャタテを知らずに食べて、アナフィラキシーを発症した症例について、日本初の論文が国際学雑誌に掲載された。この研究の発端はひとりの中年男性が同科を受診したことに始まる。

「全身にかゆみと赤い発疹が生じ、下痢や嘔吐が続き、呼吸困難の自覚は無いものの、血液中の酸素不足により唇が紫色になるチアノーゼ症状も見られました。全身に強いアレルギー症状が生じたアナフィラキシーを起こしていたのです」と、患者を診た松本医師が説明する。

アナフィラキシーの原因究明

アナフィラキシーは食べ物や薬の服用後、あるいは、ハチなどの昆虫に刺されたときに起こりやすい。松本医師は、抗ヒスタミン薬や抗炎症薬による治療を行う一方で、アレルギー反応の原因を調べることにしたという。

「アレルゲン(アレルギーの原因)は、IgE抗体を調べる血液検査でわかります。しかし、ダニなどに対するアレルギー反応は陰性でした。患者さんは、アレルギー体質でもアトピー体質でもありません。原因がわからなかったのです」(松本医師)

原因不明のアナフィラキシーの危険性

ある日突然、原因不明でアナフィラキシーを引き起こすことは、とても危険だ。急激な呼吸困難状態に陥ると意識を失い、命にかかわる。一般的にアナフィラキシーを起こした人に対しては、次の発作に備え、症状を一時的に抑える自己注射(アナフィラキシー補助治療剤)を携帯することを医師が勧める。アナフィラキシーの原因を知ったうえで、それをなるべく避けることも不可欠となる。松本医師が診た患者のように、原因不明では、予防的な対策が取りにくい。

「患者さんは毎日オートミールを食べていたので、原因としてオートミールそのものや、オートミールに混じったダニを疑いました。が、新品のオートミールとダニの検査は陰性。いろいろ調べた結果、古いオートミールの容器内で増殖したヒラタチャタテという虫を食べたことで、アナフィラキシーになっていることがわかりました」(福田診療部長)

ヒラタチャタテによる初の症例報告

ヒラタチャタテは、1ミリ程度の茶色の虫で、食品内や書籍などに発生したカビをエサに、増殖するといわれている。

オートミールは食物繊維が豊富で、健康に役立つ。だが、保存状態が悪いとヒラタチャタテが入り込んで増殖し、アレルギーを引き起こすことがあるのだ。

「ヒラタチャタテによるアナフィラキシーの報告は、海外では2例しかありません。日本では今回の症例が初めてです。そのため注意喚起の意味を込めて、『オートミール症候群』と名づけました。開封したオートミールの保管は、適切に行ってください」と福田診療部長は話す。

写真:ヒラタチャタテ (東邦大学医療センター大橋病院皮膚科提供)

解説
東邦大学医療センター大橋病院診療部長
福田 英嗣
東邦大学医療センター大橋病院診療部長。東邦大学医学部医学科皮膚科学講座准教授。1997年、東邦大学医学部卒。関東中央病院皮膚科、東邦大学医療センター大橋病院講師を経て、2012年に同准教授、2016年から現職。
解説
東邦大学医療センター大橋病院皮膚科助教
松本 千夏
東邦大学医療センター大橋病院皮膚科助教。20215年、北里大学医学部卒。東京慈恵会医科大学附属病院、横浜労災病院などを経て2023年から現職。