人は股関節から老いていく——。なんとも刺激的かつ説得力ある一言である。「股関節ほどすごい関節はない」と、フィジカルトレーナーの第一人者が届けるお悩み解決本が『すごい股関節 柔らかさ・なめらかさ・動かしやすさをつくる』(日経BP刊、1760円)だ。著者はオリンピック選手や青山学院大学駅伝チームの強化指導も担当するフィジカルトレーナー協会代表理事の中野ジェームズ修一さん=写真。
股関節が果たす重要な役割
2本の足で歩き、立ち上がる。ごく当たり前の動作は人間ならでは。そのために重要な役割を果たすのが、上半身と下半身をつなぐ股関節だ。
それだけに、股関節の不調は腰痛やこわばり、柔軟性不足などにもつながっていく。
読み進むにつれ、中野さんの数々の経験に基づき、股関節のしくみ、役割、痛みの原因などを知るとともに、バランスの整え方などを知っていくことができる。
股関節の機能を確認するアセスメント
本書では「アセスメント」という簡単な体操をやりながら股関節が機能的に働いているかどうかを確認する方法を示す。
アセスメントは「屈曲・伸展」と「回旋」の2種類に分けられ、いずれもイスの前で片足を後ろに引いてしゃがむところからはじめる。たとえばこうだ。
屈曲・伸展
一気に立ち上がり、引いたほうの足をまっすぐ前に出す→股関節の柔軟性と、立ち上がるときの最低限の筋力があるかどうかをチェック。
回旋
一気に立ち上がるとともに、脚を付け根からぐるっと回す→股関節を内旋・外旋させる可動域と筋力、そして体を安定させるバランス力があるかどうかをチェック。
知識と実践が健康寿命を支える
また、二次元バーコードを読み込むことで紹介された運動の動画で見ることができるのも親切だ。
さらに、〈人間はまだ直立二足歩行に適応できていない?〉〈「厚底シューズ」で股関節の故障が続出〉といった気になる項目も多く、股関節にまつわるトリビアを読み物としても楽しみながら理解が深まる。
執筆のきっかけを中野さんが語る。
「股関節ほどすごい関節はないと私は思っています。構造が複雑で、関与する筋肉も多く、驚くほど緻密にできていて、知れば知るほど人体の素晴らしさを感じさせる関節です。せっかくこんな関節が備わっているのですから、股関節についてもっと知ってほしいと思い、本を書きました。股関節の仕組みを理解すれば、どのような運動をすれば股関節の状態を良くすることができるかが分かるからです」
その知見が健康寿命の強い味方になる。
股関節が「今」痛い人への「ユラユラ体操」
- 片手を壁につけ、もう片方の手は腰に添える。片足をつま先立ちにし、上体を左右に揺らす
- 壁に寄りかかり、片足を少し床から浮かせ、その足を上下に揺らす
☆股関節の同じ箇所に負荷がかからないために、負荷を分散させるための体操
☆イスに座っての貧乏ゆすりでも可。
※本書から