「SNS依存症」は、独居老人に多く見られます。1人暮らしでスマートフォンを使っていると、知らず知らずのうちにゲームにはまったり、SNSにはまったりして、生活が破綻してしまうというのです。
SNS依存の症例
「1人暮らしの父を訪ねると、いつもスマホをやっていて、家の中は散らかし放題。ゴミは溜まり、台所は食器の山。スマホを取り上げるとボーッとしたまま、何もしません」
こんな相談を受けることが多くなりました。この高齢者の場合は、「SNS依存症」で、絶えずXをチェックし、ポスト、リポスト、リプといった反応を繰り返さないと、不安に陥るのです。そうしていないと、「自分は全く価値のない人間」と思い、うつ状態になってしまうのです。
脳の情報処理とSNS依存症
人間の脳の情報処理能力には限界があります。オーバーすると、脳の前頭葉の血流が減少し、判断力や意欲が減退します。脳の情報処理には次の3段階があります。
- 情報をインプットする
- 整理・処理する
- アウトプット(発信)する
スマホをやり過ぎると、(2)の整理・処理ができなくなり、脳内がゴミ溜め化します。すると、実生活もゴミ溜め化してしまうのです。
HSPとSNS依存
ところで、最近よく聞くのが、「HSP」です。Highly Sensitive Personの略で、日本では「繊細さん」などと言い換えられています。日本はとくにHSPが多い国とされます。
HSPの人たちは、自分が取り残されるのが怖く、徹底して情報を見ます。フェイスブックなら同好グループ、フォロワーの投稿を常にチェックします。Xもインスタグラムも同じです。「見なきゃ遅れる」という心理が強く働くのです。
HSPと身体的な不調
自分の投稿に関しては、「いいね!」「フォロワー」「リプ」など反響をとことん気にします。さらに、ブロックされたりすると、「どうしたんだろう」とずっと気をもみます。返答にも何時間も悩みます。
その結果、身体的に不調をきたします。眼精疲労、肩こり、頭痛などが起きます。HSPの症状を訴えるのは、若い世代が中心ですが、最近は、高齢者も増えました。
HSPと精神的健康
HSPという言葉が一般化したため、最近は「HSP診断」を始めた精神科もあります。「HSP外来」もできました。ただ、HSPは持って生まれた「気質」であって、「精神疾患」ではないとされています。
HSPの人は、一般の生活の中で「生きづらい」「疲れた」を感じやすく、それを訴えます。そうして、本当にうつ病に移行してしまう場合もあるとされたため、精神科医のカウンセリングの対象となりました。
SNS依存症からの脱出
「SNS依存症」から脱出するには、ともかく、「デジタルデトックス」(スマホの断捨離)を行うことです。スマホに触れない時間を定期的につくる—これに尽きます。たとえばウオーキングに出てみる。このときスマホは持っていってはいけません。
自然回帰と心の健康
私は、デジタルデトックスの最善の方法は、自然回帰だと思っています。ご自身が置かれた状況次第ですが、高齢になったら都会から逃れ、郊外や田舎の豊かな自然の中で暮らすことです。自然の中で暮らしている人に、心を病む人はあまりいません。