食材 長寿

人生100年時代に備える「骨活」はじめよう

人生100年時代に備える「骨活」はじめよう
エイジングケア
文字サイズ

健康寿命延伸の鍵となる骨の健康

「人生100年時代」という言葉が定着する中で、課題とされているのが健康寿命の延伸です。そこで、長く自立した生活を続けるために意識したいのが“骨の健康”です。ゆりクリニック(東京都港区)の矢吹有里院長に話を聞きました。

「骨は誰にでもあって体の支柱となっているもの。小さいころからだんだんと成長して、大きくなると動かないように思われるかもしれませんが、毎日のように古くなった骨を新しい骨で埋めるサイクルを繰り返しているのです。1サイクルで3~4カ月。全身の骨は3~4年で入れ替わります。変わらないように見えて、一生懸命代謝しているのです」

骨代謝とホルモンの関係性

骨代謝について、整形外科医である矢吹院長はこう話します。一方で、女性は閉経後のホルモンの変化により骨密度が低下しやすく、骨粗鬆(こつそしょう)症リスクが高まることが知られています。「日本人女性は健康寿命と平均寿命の差が12歳程度あるのですが、健康寿命が短くなる要因では転倒や骨折・関節障害が第1位となっています」

高齢になって転倒・骨折で入院すると、ドミノ倒しのように全身状態が悪化する人が少なくありません。「骨をちゃんと壊してちゃんと作るバランスを保っているのが女性ホルモンのエストロゲン。女性は20歳ごろに骨量のピークを迎え、最大骨量(ピークボーンマス)を獲得します。その後は、いわゆる更年期を迎えるまでキープされるのですが、女性ホルモンが減ると同じように骨量も減ります。壊す方に作る方が追いつかなくなり、骨粗鬆症リスクが高まります」

骨刺激ホルモンの役割と期待

骨代謝を円滑にするカギを握るのが、骨を刺激することで分泌する「オステオカルシン」というホルモン。認知・記憶機能の改善や筋力の向上、生殖能力を高めるなど、さまざまな分野で研究が進められており、「若返りホルモン」と期待が寄せられています。「骨と脳にも相関関係があり、オステオカルシンが認知機能や精神の安定化に関係していると分かってきています。鬱病の人に運動させると改善するのは、オステオカルシンが関係しているのではと注目されています」

オステオカルシン活性化のための運動

では、オステオカルシンを活性化するために必要なこととは何でしょうか。「骨に刺激を与えることが大切なので、継続的な運動が重要です。骨には刺激を与えると丈夫になる性質があります。簡単なウオーキングなどで骨に刺激を与えることや、階段の上り下りも骨にはとても良い刺激です。できれば筋力トレーニングにも取り組んでいただきたいですね。食事はバランスよくすることが基本です。カルシウムと一緒にマグネシウム、ビタミンD、ビタミンKを摂取することが大切です」

骨を支える栄養素とその摂取法

カルシウムの吸収を助けるビタミンDは魚や干しシイタケなどに多く含まれています。しかし東京慈恵会医科大学は昨年、日本人の98%が「ビタミンD不足」という調査を発表しています。「ビタミンDはサプリメントなどを活用して積極的に摂取していただきたいです」と矢吹院長。

「さらに体のもとになるタンパク質を肉、魚、大豆製品などで摂取しましょう。欧米と比べて日本の骨粗鬆症の割合が少ないのは、大豆製品を食べる機会が多いためだと言われています。食が細くなってきたという方には、甘い物の代わりにプロテインバーなどを食べることをおすすめしています」

骨健康を知るための自己チェック

もう1つ忘れてはいけないのが、自分の骨の健康度を把握すること。雪印メグミルクでは、「100年の人生を支える骨をつくろう」というコンセプトを掲げ、「骨太な未来プロジェクト」を推進しています。見逃されがちな「骨の健康」を通じて人々の挑戦を応援するプロジェクト。長年にわたる乳の研究から得られた知見を生かし、特設サイトやメディア、イベント、学会などを通じて、骨に関する食、スポーツ、ウェルネス、子育てといったテーマで情報発信や体験の場を提供しています。

このプロジェクトのアドバイザーを務めている矢吹院長は「骨密度を知ることで、骨について考えるきっかけになると思います」と強調します。

骨の役割と健康維持のメリット

「骨にはカルシウムの貯蔵庫としての役割もあります。カルシウムは人間のあらゆる細胞の機能維持や神経伝達のために欠かせない物質です。臓器としての骨の役割が注目されているのです」

まさに骨こそが健康の柱。骨の健康を意識することは、転倒・骨折による寝たきりリスクの予防だけでなく、さまざまなメリットがありそうです。

矢吹有里(やぶき・ゆり)

ゆりクリニック院長。日本整形外科学会専門医、日本抗加齢医学会専門医。東京女子医科大学卒業後、慶應義塾大学整形外科学教室に入室。東京都済生会中央病院整形外科医長などを経て、2017年11月、ゆりクリニックを開院。「骨太な未来プロジェクト」ではアドバイザーを務めている。

執筆者
「健活手帖」 編集部