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危険がいっぱい「高齢者SNS依存症」(3)~依存症脱出のための「デジタルデトックス」

危険がいっぱい「高齢者SNS依存症」(3)~依存症脱出のための「デジタルデトックス」
予防・健康
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少し前まで、老後生活は自然の中で送るのが理想でした。都会の喧騒(けんそう)を離れ、豊かな自然に恵まれた郊外で暮らす。そんな老後はいまや消滅しました。

高齢者のSNS依存症の現状

いま高齢者の多くは、一日じゅうスマートフォンに触れ、リアルな世界の住民ではなくなりました。その結果、「スマホ依存症」「SNS依存症」がこうじて、クリニックにやってきます。依存症が進むと、リアルとバーチャルの区別がつかなくなり、「認知症」や「老人性うつ」の妄想が現れる場合があります。「先生、私はいつも監視されているんです」などと言い出すのです。また、常時ネットに接していないと「取り残される」という心理状態に陥るのが、「SNS依存症」です。

SNSの依存症状とその設計

SNS自体が依存症になるように設計されています。ニュースフィード(表示される最新情報)にはユーザー好みの内容が流れ、常にプッシュ通知(自身の投稿への返信など最新の更新情報)が来ます。これではやめられません。

SNS依存からの脱出方法

そこで、必要なのが「デジタルデトックス」です。いかにバーチャルな時間を減らして現実社会に戻るかです。簡単な話、スマホなしで暮らせればいいのですが、そんなことはできません。よって、最善なのは、スマホからSNSアプリを削除し、SNSを使わないことです。これができるでしょうか?

SNS依存から脱出する方法がいろいろ言われていますが、以下にまとめてみました。

(1)SNSアクセス時間を決める

1日1回1時間というように、SNSをやる時間を決めます。まず、1日の平均利用時間を割り出し、さらに1週間の自身のスケジュールを確認します。そして、学校の時間割のような利用時間割をつくります。きちんと可視化してスケジューリングしないと、依存は断ち切れません。

(2)1人でいる時間を減らす

SNSは1人でやるものです。つまり、1人になる時間を減らせばいいのです。家族がいる人なら、できる限り家族と過ごすべきです。また、友人知己と過ごす、なんらかの集まりに参加するなどのときは、スマホ禁止タイムをつくる。あるいは、スマホの電源を切るなどします。

(3)SNSをやる目的を明確化する

SNSはコミュニケーションツールです。メッセージや投稿に反応しなければ続きません。そこで、反応しない場合何が起こるかを明確化します。すると、家族、友人知己などからの緊急性のある連絡、返答以外、日常生活に何も起こらないことがわかります。

(4)アラート、通知を無効にする

とくにXの場合、まずにやるべきなのは、プッシュ通知とアラートを無効(オフ)にすることです。こうすれば、常に気を取られることはなくなり、自分が必要と思うとき以外はアクセスしなくなります。何種類ものSNSをやっていると、通知の山をこなしているだけで時間の無駄です。

(5)自助グループに参加する

依存症が進んだ場合、同じ悩みを持つ人々と話し合い、共通体験を通して回復を目指すのがもっとも効果的です。自助グループには、真剣に悩みを聞いてくれる人間が必ずいます。

(6)専門家に助けてもらう

「SNS依存症」は医学的に認められた疾患ではありませんが、精神科、心療内科などで外来を受け付け、セラピーをしています。最終的には専門家の助けを求めるのがいいでしょう。

解説・執筆者
明陵クリニック院長
吉竹 弘行
1995年、藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)卒業後、浜松医科大学精神科などを経て、明陵クリニック院長(神奈川県大和市)。著書に『「うつ」と平常の境目』(青春新書)。