【ベストセラー健康本】『腎臓の名医が教える 腎機能自力で強まる体操と食事』

【ベストセラー健康本】『腎臓の名医が教える 腎機能自力で強まる体操と食事』
予防・健康
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慢性腎臓病が「治せる病」に変わる可能性

「不治の病」とされてきた慢性腎臓病が、長年の研究や治療の発達で「治せる病」になりつつあるという。腎臓の世界的権威が、最新のエビデンスに基づき「運動」と「食事」をカギに腎機能のセルフケアを提案する一冊を紹介したい。

腎臓は、尿毒素などの老廃物や過剰な塩分を尿として体外へ排出、そして体に必要なものは再吸収する。また、体内の水分量や電解質の量を一定に保ち、身体のバランスを調整。血液を作ったり血圧を調整するホルモンをつくる。体にとって大切な役割を持つ臓器だ。

慢性腎臓病への新しいアプローチ

高血圧や糖尿病など生活習慣病の悪化に伴う慢性腎臓病は、それらの機能が損なわれるばかりでなく、一度かかると治らないとされてきた。

東北大学名誉教授で山形県立保健医療大学理事長・学長の上月正博氏=写真=が、腎機能の回復や維持につながり、自力で実践しやすい運動や食事方法などを提案するのが『腎臓の名医が教える 腎機能自力で強まる体操と食事』(徳間書店刊、1760円)だ。

腎臓病の常識を覆す運動と食事法

本書では「コペルニクス的転回」と掲げ、腎臓病に対する常識の大きな変化をあげている。たとえばこんな変化だ。

【運動】

運動を控えて安静第一→適度な運動をすべし

腎機能は回復しない→「腎臓リハビリ」で腎機能の低下を抑制、改善も可能

人工透析中は身動きせず過ごす→足漕ぎなどの軽い運動は透析の効果を上げる

【食事】

厳しい食事制限が続く→ちょっとした工夫で我慢や忍耐は不要に

タンパク質の摂取をなるべく減らす→筋肉量を低下させないため許容量の上限まで摂る

肉や魚はなるべく我慢→ごはんを「低タンパク」に置き換え、肉や魚を普通に食べる

実践しやすい腎機能改善方法

なぜ大きな変化が起きているのか、どういった理由にもとづいたものなのかが詳しく記されている。その上で、簡単に実践できる運動法や食事法を解説。慢性腎臓病への不安や恐怖がやわらぐとともに勇気ももらえる。

上月氏はこう語る。

「慢性腎臓病は成人国民の7人に1人がかかっている病気です。慢性腎臓病の治療には医師の出す薬を飲みながら、安静にすることと『厳しい』食事療法をすることが当然と考えられてきました。しかし、最近はむしろ積極的に運動をしながら、『楽な』食事療法をすることで、進行を遅らせたり、腎機能も改善することもわかってきています。本書ではその具体的方法をわかりやすくまとめました」

自身や家族が患っている人はもちろん、知識を得て予防する意味でも、一読しておきたい。

腎臓リハビリ準備体操

(1)かかと上げ下げ

両手を腰に当て両足をそろえて立つ

「ツー」と言いながら息を細く吐きつつそれぞれ5秒かけてかかとを上げ下ろす

(2)片足上げ

イスの背や手すりにつかまり胸を張って立つ

「ツー」と言いながら息を細く吐きつつ片足をゆっくり上げ下ろしする

(3)ばんざい体操

両足を肩幅に開き、両手を太ももの脇に添えて立つ

「ツー」と言いながら息を細く吐きつつゆっくり両腕をばんざいするようにして下ろす

(4)中腰スクワット

両手を腰にあて、足を肩幅に開きつま先はやや外側に向けて立つ

「ツー」と言いながら息を細く吐きつつゆっくりひざを曲げ、元の姿勢に戻る

→それぞれ数回を1セットし、1日3セットを目標とする

※腎臓リハビリ運動療法3つの柱のうちのひとつ。(本書から要約・抜粋)
 

執筆者
ジャーナリスト
田幸 和歌子
医療ジャーナリスト。1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経て、フリーランスのライターに。「週刊アサヒ芸能」で健康・医療関連のコラム「診察室のツボ」を連載中。『文藝春秋スーパードクターに教わる最新治療2023』での取材・執筆や、健康雑誌、女性誌などで女性の身体にまつわる記事を多数執筆。