がん 闘病記 がんサバイバル体験記

がんサバイバル体験記(5)~暴飲暴食を悔やみワイン断ちと食習慣改善

がんサバイバル体験記(5)~暴飲暴食を悔やみワイン断ちと食習慣改善
病気・治療
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がんとの闘いの超サバイバー

 この10年間で2度のがんを発症し、一時はがんの疑いがあった腫瘍を合わせると3度の手術を経験した国際医療経済学者のアキよしかわさん(65)。がんはいずれも原発がん(元のがん)という珍しいケースだった。それぞれ治療は成功し、がんの超サバイバーとなり、研究や会社経営の日常を取り戻している。

がん発症の原因は食生活?

 なぜ、がんを発症するのか。その原因は解明されつつある。アキさんのかつての食事パターンは次のようだった。「1日5食とり、4食目は主にあんパンを中心としたおやつ。食べ物がなくなることを恐れ、常にかばんには非常食を確保していました」直接の因果関係は不明だが、このような食事を続けたアキさんは最初のがんとして、大腸がん(ステージ3b)を発症した。大腸がんは日本で一番増えているがんの一つで、罹患数は男女合わせると1位、がん死亡数では女性が1位、男性が2位に。

欧米化した食生活の影響

 大腸がんの主な原因は、動物性脂肪などが多い食の欧米化といわれている。アキさんの主治医であるがん研有明病院(東京都江東区)上部消化管内科副医長の山本浩之医師が解説する。「大腸は食べ物の影響を受けやすく、食生活の欧米化により動物性脂肪や動物性たんぱくを以前の日本人よりもたくさん摂取していることが、大腸がんにつながっていると言われています。そのためピロリ菌除菌により減少傾向にある胃がんとは違い、大腸がんは増加傾向にあります」

アキさんの食生活の変化

 アキさんの場合はどうか。「アキさんは米国での生活も長く、米国で食事を摂っていることから、もろに食の欧米化の影響を受けたとみられます」と山本医師。アキさんは2014年の大腸がんの手術後は、食事内容を変え、ベジタリアンに転じた。ただ、生来のワイン好きは変わらず、術後2年間は禁酒したものの、その後はもとの大酒飲みに戻っていた。

食道がんとアルコールの関係

 アキさんの2つ目のがんは食道がんだった。食道がんと酒との関係は研究で明確になっており、山本医師によれば、「食道がんは、酒をよく飲む人でリスクは高くなります」という。「特に飲酒により顔が赤くなる人は、遺伝的にアルコールやアルコールが分解されたアセトアルデヒドが体内に長時間残りやすく、そのことが発がんに関与しています。あてはまる人で、よく飲酒される人は、一度内視鏡検査を受けられることをお勧めします」

飲酒の影響と予防策

 アルコールの種類でも、ウイスキーや焼酎のようにアルコール度数が高い方が、ビールなどの度数が低い酒より食道がんの発症率は上昇する。ワインはこの中間か。アキさんは「これからはもっと命を大切にしよう」とワイン断ちを続けている。

がんの発症と予防方法

 遺伝性のがんの発症は5~7%と言われている。そのほかのがんは、環境要因とされ、具体的には食事内容の偏りなどの生活習慣が主な原因とされる。早期発見されれば、治癒(ちゆ)率が高くなるがん種は少なくない。がんは男女ともミドル・シニア世代で罹患者が増える。アキさんのがんサバイバルの教訓をどう生かすかは、あなた次第だ。「自分だけは大丈夫」と思わず、食生活を見直すこと、そして何よりも早期発見のための検診を怠らないことが大切である。

アキよしかわ

国際医療経済学者。1958年生まれ。65歳。米カリフォルニア大学バークレー校とスタンフォード大学で教鞭をとり、スタンフォード大学で医療政策学部を設立。米国政府はじめ、米国・欧州・アジア各地の病院のアドバイザーとして活躍。日本では「グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン」(東京・新宿)を立ち上げ会長に就任。主な著書に『日米がん格差』、共著に『医療崩壊の真実』。

執筆者
「健活手帖」 編集部