医者の心配ないはどこまで信じる?
〈医者の「心配ない」はどれくらい信用できる?〉〈患者からの「袖の下」ってまだあるの?〉〈「ご臨終です」と告げるとき、医者は何を考えている?〉。帯を読むだけで気になり本の扉を開いてしまった。『患者の前で医者が考えていること』(三笠書房刊、1540円)の著者、松永正訓さん=写真=は38年のキャリアをもつ小児外科医。自身も7回の入院経験を持ち、患者の不安な気持ちを理解する目線で、「いい医者」の見分け方を教えてくれる一冊だ。
目に見えない医師の日常とは
松永医師は『運命の子 トリソミー:短命という定めの男の子を授かった家族の物語』で小学館ノンフィクション大賞を受賞するなど、豊富な著作を持つ。だれにでもわかりやすい筆致だ。
「当直」「学会」という、知っているようで詳しくは知らない医師の実態、勤務医と開業医のお金や時間の使い方やバランス、そして医師のプライベートといった、医師の日常についての解説も興味深い。
医者は患者をどう覚えているか
とくに〈医者は患者のことを覚えているのか〉というトピックスが印象的だ。これまでの数万件におよぶであろう診察のなか、もちろんすべてを詳細に覚えきれるものではない。しかし、「みなさんが思っている以上に医者は患者さんのことを覚えています」として、松永医師はこう記す。
医師は仕事を超えて患者と向き合う
「医者は『仕事』『ビジネス』として患者さんと付き合っているわけではありません。患者さんを診察・診療するということは、その人のプライバシーのかなり深いところまで知るということです」
責任を持って、日々患者と向き合う。人と人をつなぎ命を守る。医師という職業の存在意義はそこにある。松永医師が、本書に込めた思いを語る。
高齢化社会における医師と患者の関係
「日本は先進国の中でも目立って人口比で医師数の少ない国です。そんな我が国では高齢化がますます進み、医療の手助けを必要とする人が増えていくはずです。しかし、患者さんと医師の関係はうまくいっているでしょうか? 本書では医療に対する患者さんの疑問に答えていきます。お互いの理解の橋渡しになるでしょう。ぜひ、クリニックや病院を受診するときの参考にしてください」
超高齢社会に向けて心構えが必要
2025年には、「団塊の世代」が後期高齢者となり、国民の5人に1人が後期高齢者となる超高齢社会が到来する。
医師と患者との関係性がますます重要となる時代に向け、知っておきたい心構えとともに医師のヒューマニズムに触れるうち、不安が解消されていく。そんな一冊である。
医者が見た「いい病院」のポイントは?
- 処置数や手術数の多さ…ただし、単純に数字のみを見るのではなく、“するべき”手術件数の多さに注目する
- アクセスのよさ…たとえ手術件数が多くとも自宅からのアクセスが悪いと不便なことも多い。遠くの“名医”より近くの“並医”
- ランキング本はセカンドオピニオンのための参考書として活用する
- ネットにあるクチコミの内容をすべて信用して選んではならない
(※本書から抜粋)