年間50万人かかるのに7割は受診もしていない
厚生労働省の「令和2年(2020)患者調査」によると、2020年10月の鼠径ヘルニアの患者総数は3・6万人。年間40万~50万人が鼠径ヘルニアになっているわけです。
しかもデータ上、手術を受ける人は約3割。残りの約7割は、受診もしていません。私は長年、消化器外科医として鼠径ヘルニアの治療に当たってきましたが、これは大きな問題だと思っています。重症化を防ぐためにも「早期発見」が重要です。そこで今回は、鼠径ヘルニアのセルフチェック法を紹介します。
こんな特徴はありませんか
まずは日常生活で以下の症状がないか確認してください。
- 太もものつけ根(下腹部)にやわらかいふくらみがある
- そのふくらみは、手で押し込むと消える
- 横になるとそのふくらみがなくなる
- 下腹部になんとなく違和感や不快感がある
- ときどき差し込むような痛みを感じる
- お腹が張っているような感じがする
これらの中で当てはまる項目が多ければ多いほど、鼠径ヘルニアの可能性は高くなります。なお、鼠径ヘルニアはたいていが片方だけに発症するため、鼠径部の左右を比べてどちらかに「なんとなくふくらみがある」場合、可能性を疑ってよいと思います。
お風呂で簡単「鼠径ヘルニア発見法」
鼠径ヘルニアは、お風呂上がりなどにチェックするのがおすすめです。
- 立った状態で、人さし指、中指、薬指をそれぞれ軽くつけ、両手の親指と人さし指で逆三角形をつくります
- 小指を太もものつけ根部分にあて、手のひら全体で下腹部(鼠径部)を覆います
- その状態で、空咳をします。うまく咳ができない場合や、わからない人はトイレで力むようなイメージで力を入れてみてください
- このとき、親指大からピンポン玉大のものが内側から押し返してきて、手のひらに当たるような感触があったら、鼠径ヘルニアの可能性が高いです
早期発見・早期治療は負担も少ない
患者さんが来院されるタイミングで一番多いのは、ピンポン玉くらいの大きさになったときです。ふくらみがソフトボール以上の大きさになれば、トイレがしにくかったり洋服を着ていても目立ったりと日常生活に支障をきたします。また、手術も難しくなり、回復の時間も遅くなります。
一方で、親指大程度の初期段階で手術をすれば回復も早く見込めます。初期の場合、痛みも違和感もないため、「大丈夫」と思う気持ちはわかります。しかし、「なんだか違和感があるな」という状態のときにはぜひ受診していただきたいと思います。