クモ膜下出血と高血圧性脳内出血
脳卒中には大きく分けて、脳出血と脳梗塞があります。脳出血は血管が破れ出血で脳が壊されてしまう病態です。太い脳血管にできた脳動脈瘤が破裂するとクモ膜下出血、高血圧が原因で細い血管が破裂すると高血圧性脳内出血になります。
クモ膜下出血では太い血管にできた脳動脈瘤が破裂するため死亡率は50%近くになります。高血圧性脳内出血では、血管が破裂した部位で出血がどのくらい広がるかにより症状は変わります。小さい脳出血の場合には全く症状が出ない場合もあります。
血流が脳にいかなくなる脳梗塞と血栓が詰まる脳塞栓
脳梗塞の原因は、血管が詰まり、血流が脳に行かなくなるため神経細胞が死に、脳梗塞を起こすというものです。心臓から流れてきた血栓が脳の動脈に詰まり、脳梗塞を引き起こした場合を脳塞栓(のうそくせん)症と言います。脳塞栓は大きな脳へいく動脈をつめるので、脳梗塞の範囲は大きくなり症状も重篤になります。
小さい血管が動脈硬化で詰まった場合は、症状は軽微なことが多いのですが、運動神経の通り道を栄養する(=酸素と栄養素を体中に送り届ける)血管をつめてしまうと重い片マヒや失語症が出現します。
一方、クモ膜下出血を引き起こす脳動脈瘤の破裂は、破裂する前に発見して治療すればクモ膜下出血を起こしません。現在では開頭術を行わずに血管内外科手術でうまく治療できます。
クモ膜下出血も脳塞栓症も予防が可能
また脳塞栓の原因となる、心臓でできる血栓は心房細動という不整脈のせいです。心房細動になると胸がドキドキして誰でもこれはおかしいと分かります。心房細動もアブレーションという血管内外科手術で治療できます。そうです、クモ膜下出血も脳塞栓症も予防が可能な時代なのです。
脳卒中の3つの原因
脳卒中の原因は、3つ考えられます。血管の壁、血管の中を流れる血液の性状、血液の流れ方のどれかの異常です。
血管壁の異常には、クモ膜下出血の原因となる脳動脈瘤の発生、動脈硬化によって血管壁が厚く硬くなり狭くなる動脈狭窄(きょうさく)があり、動脈狭窄は脳梗塞の原因になります。血液が流れる血管の中に空気が流れると空気塞栓を起こします。脂肪が流れると脂肪塞栓を起こします。空気や脂肪が流れることは極めてまれで外傷の時だけです。
しかし、血液には血が固まる性質があります。血液は血管の外に出なければ固まらないのですが、血液の流れが遅いところでは赤血球同士が集まって固まり、いわゆる血栓ができてしまいます。
血液の流れが遅い状態は、血液がドロドロになった状態とも言えます。このドロドロした血液はすぐには脳卒中の原因とはなりません。元からある動脈硬化+ドロドロ血液が脳梗塞発症の原因になります。
血流のドロドロは脱水で引き起こされる
この血液がドロドロした状態は熱中症による脱水で引き起こされます。最近の異常気象の猛暑の中で30分以上炎天下にいると、体温は上昇し大汗をかきます。急激な大量の汗は脱水と電解質異常を招き、直射日光は頭皮、頭蓋骨を通して脳の温度を上げます。
われわれの体にある体熱を下げるメカニズムは、発汗により体温を下げるしか方法はありませんが脳は頭蓋骨で囲まれているのでうまく働いていません。血液の中の水分が不足すると血液はドロドロになり粘着しやすくなり、そして血流速度は落ちます。大脳の温度が上がり、脳血流が減った脳は、頭重感、だるさ、体に力が入らないと訴えることになります。これを放置すると、次に来るのはけいれんと意識消失です。これが急性日射病の病態です。