頭痛 脳・脳疾患 脳神経外科疾患を知る

脳神経外科疾患を知る(1)~光刺激が「片頭痛」を起こす

脳神経外科疾患を知る(1)~光刺激が「片頭痛」を起こす
病気・治療
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緊張型頭痛は肩こり、首こりから起きるが

頭痛を経験したことがない人はいないはずです。エジプト王朝時代より頭痛とてんかんは人間を悩ませてきました。きょうの話はその頭痛の中でも片頭痛の話です。

頑固な頭痛はすべて片頭痛と表現する人が多いのですが、実は頑固な頭痛には片頭痛だけでなく僧帽筋(そうぼうきん)の緊張によって起きる緊張型頭痛、いわゆる肩こり、首こりによる頭痛があります。むしろ緊張型頭痛の方が一般的です。

僧帽筋は頭頸部を支えて頭部の姿勢を維持する筋肉です。この僧帽筋の緊張が長期間持続すると今度は神経痛という痛みが出てきます。机に座って長時間パソコンを見て仕事をする人がかかります。最近は子供が長時間スマートフォンに夢中になって緊張型頭痛を発症するケースも増えています。

片頭痛はストレッチでも解消されない

次は片頭痛です。典型的な片頭痛は高校生時代くらいに発症する拍動性の頭痛です。約半数に遺伝が認められ、頭痛の前に前兆として閃輝暗点(せんきあんてん)という目の前にキラキラ光るギザギザしたものが見える人もいます。この閃輝暗点は後大脳動脈の収縮によって引き起こされます。そして、その30分後にたいていどちらか片方で、心臓の拍動と同じようなズキンズキンという痛みが起こります。

この頭痛発作が起きるとたいていの人は仕事や勉強などができなくなり、頭痛を我慢して横になり、最後には寝てしまうことになります。片頭痛の場合、頭を動かすことは痛みのためにできませんが、緊張型頭痛の人は頭頸部のストレッチで頭痛が軽減します。

吐き気や腹痛を伴う偏頭痛も

さらに片頭痛の場合、痛みだけでなく、吐き気や腹痛などの自律神経症状も伴うことがあります。そして片頭痛は光や音、におい刺激によっても誘発されるのです。この夏は、強い日差しが光刺激となり、片頭痛発作を起こす患者さんが増えました。そうした場合、たいてい真昼の外出を避けるか、サングラスか頓服(トリプタン製剤)を飲んで外出するかを選ぶことになります。

クモ膜下出血、脳腫瘍も光刺激を嫌う

クモ膜下出血、脳腫瘍など、脳の圧が高くなる病気ではみんな明るい光を嫌います。すなわち脳に異常がある場合、光刺激は脳を活性化し頭痛の原因となりやすいのです。反対に炎天下で遊んでいられる人は、健康な脳を持っているということになります。

脳を活性化するような刺激は、すべて脳圧を上げますが、脳圧は硬膜の三叉神経(さんさしんけい)に伝わります。この時感度のいい人では、頭痛を覚えることになります。顔面と頭皮の知覚神経は、三叉神経が支配しています。直接、三叉神経に異常を起こした場合でも、頭痛を引き起こすことになります。

耐えがたい痛みの三叉神経痛

三叉神経が脳幹から出てくる場所を上小脳動脈がヒットすると三叉神経痛を引き起きます。三叉神経痛は耐えがたい痛みで外科的治療を行う場合が多いです。

緊張型頭痛、三叉神経痛は、すべて末梢神経から中枢という方向に痛み刺激が伝わります。しかし、片頭痛の痛みは複雑です。片頭痛では、中枢の異常信号(例えば脳の活性化)が三叉神経へ伝わり、三叉神経から硬膜へ炎症物質の放出、そしてそれが三叉神経を興奮させ、中枢へ伝わり頭痛を引き起こすという痛み回路ができあがっています。

緊張型頭痛の人にとって夏から続く暑さが筋肉を弛緩させ頭痛を軽減しますが、片頭痛の人は強い日差しにはサングラスで乗り切りましょう。

解説・執筆者
脳外科医
氏家 弘
脳外科医。岩手医科大学卒業、東京女子医大で研修を積んだ後、2009~2017年、東京労災病院、脳神経外科部長。その間、脳神経外科手術と医工連携による医療機器の開発に没頭。2019年から氏家脳神経外科内科クリニック(東京・紀尾井町)院長を務め、鎌ケ谷総合病院でも手術を執刀する。