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睡眠トラブル解消に「レンゲ セルフケア」

睡眠トラブル解消に「レンゲ セルフケア」
予防・健康
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睡眠不足や昼間の眠さに悩む人が増えています。それを解消するのが、レンゲを使った画期的なセルフケア法です。不眠を“未病”と捉え、眠りを妨げる要因からアプローチしてきた東洋医学のメソッドを反映しています。強い力も必要なく、誰でも簡単にできるセルフケアです。

東洋医学と理学療法の知恵が結集したケア方法

そもそも、世界的にみても睡眠時間が不足しがちな日本人。厚生労働省の調査によれば、「睡眠の質に何かしらの悩みがある」と答えた人は7割にも上ります。健康維持のために、いかに良質な睡眠を確保するかは喫緊の課題です。

そこで救世主となってくれるのが、東洋医学の知恵をベースにしたセルフケア法。家庭でもおなじみの“レンゲ”を使い、ツボや経絡(エネルギーライン)を刺激をする方法です。これは、東洋医学に精通する鍼灸あん摩マッサージ指圧師の石垣英俊さんが、理学療法士の幸田誠さんのアドバイスを元に考案したもの。ボディーケアのスペシャリストの2人が、これまでの経験と知識を踏まえて選んだ、プロの技に近い効果を誰でも簡単に再現できる健康器具なのです。

「“レンゲケア”のポイントは、もまないこと。不調の原因となるツボや筋肉のコリは、ツボや経絡を押したり、さすったり、動かすだけで刺激が正確に伝わります。中途半端にもみほぐすよりも、効果を得やすいという利点があるからです」(石垣さん)

眠りを妨げる原因を知り効果的に問題解消

ここで改めて東洋医学の観点から睡眠問題をひもときます。寝付きが悪い(入眠障害)、夜中に目が覚める(中途覚醒)、ぐっすり眠った気がしない(熟眠障害)などが睡眠トラブルに挙げられますが、これらの問題を解決するために、眠りを妨げる原因にアプローチしていくのが東洋医学。

「体を構成する基本を気(エネルギー)・血(血液)・水(血液以外の液体)の三要素と捉えるのですが、これらが不調の原因を探る物差しになります。1つの要素が不足したり、滞ったり、偏っていると不調を招き、睡眠トラブルにもつながっていきます」

気・血・水の3大要素を整えるために、一番大事なのが消化器系のケア。

「普段もそうですが、特に冷たい飲み物を摂取しがちな夏の胃腸は、冷えやすくて疲れやすいもの。その結果、エネルギー不足になり、気・血・水の巡りは滞りがちです。実は、ぐっすり眠るのにもエネルギーが必要なんです。心身のバランスを整えるために、まずは胃腸を整えるケアを欠かさず行ってください」

心と体は表裏一体だと捉えるのも、東洋医学ならではの観点。

「イライラや不安、緊張が体のバランスを乱す原因になることも。だから、眠れないと焦ったりすると逆効果。近年の異常な暑さで、ある程度不眠になるのも致し方ない、と捉えるおうようさも必要です」

普段より睡眠時間が減っても、気持ちよく眠れるよう睡眠環境を整えたり、夜眠れない分は昼間に休息を取るなど、自分の生活に合った対応を考えましょう。

レンゲの使い方

レンゲは陶器製で、柄の部分に少しカーブがある形がおすすめ。肌の滑りが悪いときは、ボディークリームやオイルなどを塗って行うといい。ツボや経絡(エネルギーライン)の位置は、理学療法的にも需要なポイントと重なる。レンゲを使って刺激することで、ツボや経絡に加えて、それぞれの不調に関連する筋肉や筋膜の張りやコリにもアプローチでき、相乗効果を期待できる。

ツボを押すとき

持ち方

親指で柄の根元を抑え、残りの4本の指で吸い口を包み込むようにする。

使い方

柄の先端部分のカーブをツボに当て、親指の力でグッと押し込む。ゆっくり5秒押し込んで5秒力を抜く、を繰り返す。痛ければ優しい刺激で、そうでなければ少し深くまで圧をかけてもOK。

経絡を刺激して、押し流すとき

持ち方

柄を手で包み込むように持ち、親指は吸い口の根元に。

使い方

吸い口のふちの部分を肌に当てて、肌に軽く密着させたまま皮下組織の筋肉や筋膜を押し流すイメージ。痛くない範囲で、やや強めに圧をかけて。

弱りやすい 消化器のケア

エネルギーを生み出す源となり、夏場に弱りやすい消化器系(胃腸)を癒やすのは、誰にとっても大切。西洋医学の観点からすると、消化器系の働きをつかさどる自律神経は、睡眠の質にも大きく関わってきます。胃腸が健やかなら、自律神経のバランスも整いやすくなり、結果、良質な睡眠が得られるようになるのです。

どこを刺激する

胃経絡

食べたものを消化、吸収、排泄(はいせつ)するために欠かせないエネルギーが流れる場所。実際は目の下から首、おなか、足の人さし指までつながる長いラインだけど、ここではセルフケアがしやすい脚の付け根から足首までをアプローチする。

胃経絡にある注目のツボ

梁丘(りょうきゅう)

膝の前面で、膝骸骨(膝のお皿)の外側の上端から、指3本分上に行った場所。胃痛、胃もたれ、胸やけ、下痢の症状の緩和に。

足三里(あしさんり)

膝骸骨(膝のお皿)の下、靱帯(じんたい)の外側にあるくぼみから、指4本分下ににある場所。胃腸ケアの万能ツボとも言われる。夏バテ防止、冷房病対策にも効果あり。

解渓(かいけい)

足首の関節前面で、内くるぶしと外くるぶしの中間点。代謝を高め、腹痛や便秘、おなかのはりなどの症状の緩和に。

やり方

まずは脚の付け根から「梁丘」までのラインを上から下に、レンゲの吸い口の縁を当てたまま押し流すように移動させる。10回やったら、次は「足三里」から「解渓」までのラインも同様に10回押し流す。それだけで効果はあるが、レンゲの柄の先端で、3カ所のツボをピンポイントに刺激を加えてもいい。

鍼灸師にはおなじみ 不眠対策のツボ

不眠を未病の1つとしてケアの対象とみなす東洋医学では、睡眠のトラブル解消に役立つツボも存在する。睡眠前に呼吸を整えながらツボ押しすれば、リラックス効果もアップ。

安眠(あんみん)

どこを刺激する

耳の後ろの突起から指1本分下のやや内側にあるツボ。不眠に効果あり。この周辺には自律神経の中継所のようなものもあり、自律神経の乱れを整えてくれるので、ツボとの相乗効果を期待できる。肩や首のコリの緩和も。

やり方

皮膚表面に対して、レンゲの柄の先端で垂直に圧がかかるようにする。最初は弱めで。イタ気持ちいいレベルで徐々に強めに圧をかける。

失眠(しつみん)

どこを刺激する?

足裏のかかと中央にある、少しくぼんだ場所。交感神経の影響などで興奮した精神を鎮め、眠気を誘う効果があるとされている。足のむくみや冷えの緩和にも。

やり方

レンゲを持たない方の手で、刺激する足の足首を持って安定させ、やや強めの圧で、少し長めに圧をかける。

眠りを邪魔する症状別ケア方法

睡眠トラブルをもたらす、代表的な4つの原因をピックアップ。該当する症状を選び、おすすめのケア法を実践してほしい。症状の度合いや気になることは日々変わるものなので、日によってケアを変えたり、症状が重く感じるときはいつもより丁寧に時間をかけて行うなど、その日の自分の心と体の状態に合わせて取り組むとより効果的。

イライラ

どこを刺激する?

【太衝(たいしょう)】

足の親指と人差し指の骨が交差するV字の窪みにあるツボ。親指の骨に沿って足首方向になぞると指が止まる所。

【行間(こうかん)】

親指と人差し指の間にある付け根。付け根周辺を押してみると気持ちいいポイントがある。

やり方

レンゲの柄を使い、ツボの間を行き来するようゆっくり押し流すように刺激する。10回繰り返す。ツボを1つずつピンポイントに押してもいい。自律神経を整えてくれる効果があるので、イライラして寝つきが悪い人向き。更年期特有ののぼせや、頭痛、めまいなどの緩和作用にも期待できる。

多汗

どこを刺激する?

【合谷(ごうこく)】

手の甲の親指と人差し指の骨が交わる場所。

やり方

レンゲの柄の先を人差し指の骨の裏側に向けて押す。表面の張りが強くなければやや強め目に押してもいい。5秒押して5秒力を抜く繰り返し10回。更年期や精神的なストレスの影響で体温が上がり、過剰に汗をかいてしまい、睡眠中目が覚めやすい人におすすめ。万能なツボで、胃もたれや食欲不振の解消にも効果がある。

ホルモンバランスの乱れ

どこを刺激する?

【三陰交(さんいんこう)】

内側のくるぶしの頂点から指4本分上。

【太渓(たいけい)】

内くるぶしとアキレス腱の間にあるくぼみ。

やり方

レンゲの吸い口の縁を肌に当て、「三陰交」と「太渓」を結ぶラインを押し流すようにゆっくり刺激。5往復。ツボをピンポイントで刺激してもいい。婦人科系ケアに向く代表的な二つのツボを刺激すれば、ホルモンバランスの乱れが整う。更年期症状が原因で睡眠トラブルを招いている人におすすめ。

熱がこもる

どこを刺激する?

【豊隆(ほうりゅう)】

すねの少し外側で、膝と足首のちょうど中間あたりの高さに位置。

やり方

盛り上がって張っているツボにある筋繊維をほぐすように、レンゲの柄をツボに当てたままで左右に動かす。ゆっくり10往復。甘いもの、味が濃いもの、脂肪分を多く含むものなど飲食の不摂生で胃腸の機能が低下し、眠りが浅くなって体に熱がこもったような症状が出ているときにおすすめ。代謝アップも期待できる。

 

取材・板倉みきこ/撮影・内山めぐみ/モデル・小林杏実(エミヨガ)

石垣英俊(いしがき・ひでとし)

鍼灸あん摩・マッサージ指圧師。「神楽坂ホリスティック・クーラ」代表。セラピストの育成や、セルフケアアイテムの開発にも従事。近著に幸田誠さんとの共著『誰でもコリと痛みがほぐせる もまないセルフケア』(池田書店)がある。

執筆者
「健活手帖」 編集部