食道がんで死去の山崎元氏の遺作
2024年の元日に死去した経済評論家の山崎元氏。彼を鬼籍に送ったのは食道がんだった。1年半に及んだ闘病中も積極的に病状の変化と、その時々で考えていることを発信し続けた山崎氏。その遺作となる『がんになってわかったお金と人生の本質』(朝日新聞出版刊、1760円)を紹介する。
山崎氏は2022年8月に食道がんが見つかり手術を受けた。しかしその後骨や胸膜、胸腔内への転移が見つかり、著者の「持ち時間」は一気に短縮する。
そこから残りの人生でしたいこと、すべきことを明確に示し、実践に取り組んでいった。
がん宣告され、より生き生きと…
「がんがわかってから『少し気持ちがしゃっきりした』と書かれています。がんの宣告はつらく悲しい—というイメージがあったのですが、山崎さんの場合、宣告を受けてからより生き生きとされているような印象を受けました」と、編集を担当した朝日新聞出版書籍編集部の大坂温子さん。
山崎氏は、個人投資家の水瀬ケンイチ氏との共著『【全面改訂 第3版】ほったらかし投資術』に向けて闘病中も編集者とやりとりをしていたことから、この本の出版が実現したという。
本書は闘病記に「お金」の情報を加えたつくりだが、そこに悲壮感は漂わない。淡々と病状説明があり、その時々でかかるお金の情報、どうすれば無駄なく効率的な療養生活が送れるかを、経済評論家の視点で語っていく。
残された時間を“上機嫌”に生きる
「〈癌になって、残りの人生が有限な時間であることを意識しながら生きるというのは、そう悪いことではないように思う〉という山崎さんの気持ちが感じられます。私を含め多くの人は、人生に限りがあることは頭の中では理解しつつも、日々を漫然と生きてしまっている。そんな中で、山崎さんが限られた時間を“上機嫌に”生きようとされたことは、私自身の大きな指針になっています」と大坂さん。
山崎氏は手術で入院する際、申請書の「信条」の欄に、〈正直、快活、上機嫌!〉と記入した。これは投資や仕事においても心がけているモットーで、その姿勢がページを開くたびに貫かれている。大坂さんが続ける。
最期の日のぎりぎりまで幸福は追求できる
「ご自身や、近しい方ががんにかかった人はもちろんのこと、『いまが苦しい人』にもぜひ読んでほしい。山崎さんは、ご遺稿で〈最期の日のぎりぎりまで幸福は追求できる〉と綴っています。そのためにはどんな考え方が有用なのか、山崎さんが死の間際にたどりついた最終原理をぜひ知ってほしいです」
誰にでも必ず訪れる死に、経済と精神の両面においてどう向き合えばいいのか—。そこに少しでも不安があるなら、この1冊を読んでおくことを強くお勧めする。
もし山崎氏が若いサラリーマンだったら…
- 就職後2~3年はスキルアップに努める
- 25歳くらいから収入の1~2割を貯蓄する
- 新NISAとiDeCoの初期設定と投資スタートは25歳までに始める
- 20代後半以降、将来に役立つ「良い経験」のためにはお金を惜しまない
- 45歳くらいからセカンドキャリアの準備開始
- 65歳になったら子供ら相続人への贈与を開始
(本書から抜粋)