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健康長寿の秘訣に迫る(3)~週3日の筋トレで変形施肥座関節症が緩和

健康長寿の秘訣に迫る(3)~週3日の筋トレで変形施肥座関節症が緩和
予防・健康
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元気に暮らす90代以上は定期的に筋トレしている

筋トレに励む東京在住の佐伯キヨさん(仮名)はエネルギッシュでとても91歳には見えない。取材してみると、90代で元気に暮らしている人の特徴として、定期的に筋トレをしている人が多いことが分かった。

佐伯さんが筋トレを始めたきっかけを聞くと、「ジムで筋肉をつければ、変形性膝関節症がよくなるかもしれないと思ったからです」という。

変形性膝関節症の改善にジムへ

変形性膝関節症とは、ひざの関節の軟骨がすり減り、歩行時などにひざに痛みが出る症状。悪化する前に筋トレやストレッチにより、ひざを支える筋肉を鍛えれば、ひざの痛みの軽減が期待できる。

「50代半ばに変形性膝関節症と診断され、週1回、整形外科でひざへのヒアルロン酸注射を受けていましたが、症状の改善があまり見られないことを娘が心配し、ジムを勧めてくれました」(佐伯さん)

無理なく効率よく筋肉を鍛える

佐伯さんは友人と2人でジムの体験へ。このジムの特徴は、30分という短時間で、各種のマシンを使用して全身の筋肉を効率よく鍛えられることにある。「変形性膝関節症を患っているが、無理なくできることがわかり、安心しました。これなら自分でもできる」と思い、ジムに入会した。以来、このジムには85歳から約6年間、週3回の頻度で通い続けている。

その結果、「ひざの痛みはゼロとは言えないが、軽減され、お風呂の中で正座ができるようになり、とてもうれしい。ひざへの注射も現在は月1回に減りました」と佐伯さん。

高血圧や糖尿病対象の運動プログラムも

厚生労働省は疾患別に「標準的な運動プログラム」を公表し、その中で変形性膝関節症の人を対象にした運動プログラムを紹介している。同プログラムの策定に向けた研究班代表を務めた早稲田大学スポーツ科学学術院の澤田亨教授は次のように話す。

「このプログラムでは整形外科系の疾患だけでなく、高血圧や2型糖尿病などの疾患を持つ人を対象にした運動プログラムも紹介しています。主治医の指導を受けながら運動プログラムに取り組んで元気に健康になってもらいたいと思います」

ウエストが13センチ細くなり

ジム通いには思いがけない副産物も。「仲間から『姿勢がいいわね』とほめられるようになり、入会時に比べウエストが13センチ細くなりました」

こう語る佐伯さんは、コーラス(月2回)、太極拳(月3回)も続けている。ボランティアでは、一人暮らしの高齢者のために弁当作りに取り組み、「毎週木曜日の午前8時50分から11時まで、メンバー13人で65~70食を作ります」。

体力・気力を支えているのは筋トレだろう。ちなみに、佐伯さんは介護認定を受けていない。

おすすめは多要素な運動の「ラジオ・テレビ体操」

厚労省が今年1月、別途公表した「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、高齢者に筋トレの実施を推奨。同ガイドでも策定に向けた研究班代表を務めた澤田教授は、「筋トレを続けていることが佐伯さんの元気の秘訣だと思います。このガイドは筋トレに加えて筋力・バランス・柔軟性などの多要素の運動を週3日以上行うことも推奨しています」と解説する。

佐伯さんは多要素な運動に含まれる太極拳を続けているので鬼に金棒か。「ラジオ・テレビ体操も多要素な運動ですのでお薦めです」と澤田教授は助言する。


(写真)女性専用のフィットネス「カーブス」で筋トレに励む佐伯さん

解説
早稲田大学スポーツ科学学術院教授
澤田 亨
1983年、福岡大学体育学部卒業。順天堂大学大学院体育学研究科修了。博士(医学)。東京ガス、国立健康・栄養研究所室長を経て2018年、早稲田大学スポーツ科学学術院教授に就任。体力と健康に関する研究に従事。
執筆者
「健活手帖」 編集部