「野菜中心の食事」地域は長寿
野菜が体にいいことは誰もが知っている。なぜいいのか、どういいのか、本当にいいのか—となると、正確に答えられる人は意外に少ない。そこで予防医学の専門家である国際医療福祉大学予防医学センター教授の一石英一郎医師=写真=が“野菜の威力”を冊にまとめたのが『予防医学の名医が教える すごい野菜の話』(飛鳥新社刊、1540円)である。
アメリカ国立老化研究所などが合同で設立した世界長寿研究プロジェクトが指定した5つの世界的長寿地域(ブルーゾーン)」に共通する長寿の要因がある=別項参照。このうち、一石医師はとくに「野菜中心の食事」に着目した。
長寿国で食べている野菜は?
長寿の国では何を食べているのか—。地中海にあるイタリア領サルディーニャ島ではジャガイモ、トマト、フェンネル(ハーブ)。沖縄ではゴーヤ、琉球ヨモギ、チョーミグサなどの島野菜。アメリカのカリフォルニア州にあるロマリンダでは、トマト、種子植物、マメ科植物など。
世界に名だたる長寿国には必ず地元名産の野菜があり、住民は毎日その野菜を自然に食べていることが見て取れる。そして、野菜を含む植物類、特に豆類や全粒穀物、ナッツや果物を積極的に摂取することが長寿に結びついている—とする研究結果が出ているのだ。
60歳から野菜中心の食生活に変えると寿命伸びる
それだけではない。60歳あたりまで暴飲暴食を続けてきた人でも、そこから心を入れ替えて野菜中心の食生活に切り替えることで、長寿効果を得られる—とする研究報告もある。
健康への意識改革に「乗り遅れ」はない。
なぜ野菜が体にいいのか?
もちろん、野菜がどう健康にいいのか、そのメカニズムも詳細に解説している。ニンニクに含まれる硫黄化合物「アリシン」の持つ滋養強壮、免疫力向上、がんや生活習慣病の予防、血流改善、血糖値上昇抑制など。ネギに含まれる硫黄成分「硫化アリル」にも、食欲増進や消化促進効果があるほか、やはりネギに含まれる「アリルサルフィド」という精油成分には、鎮静、緩下(便秘解消)、発汗、利尿などの作用がある。昔から伝わる「かぜを引いたらネギを食べさせる」という民間療法は理にかなっているのだ。
「実は私自身“野菜嫌い”でしたが、野菜のすごさを知るにつけ、食べるしかない—と確信するに至りました。野菜好きの人にも、嫌いな人にもぜひ読んでほしい」と一石医師は力説する。
読み進むうちに野菜の健康効果はもちろん、その野菜が人間社会となじんできた歴史も分かる「読み物」としても面白いつくりのこの本。健康増進と知識の吸収の両面から楽しめる。
ブルーゾーン(世界的「長寿地域」5カ所)に共通する長寿の要因
- よく体を動かしている。規則的に運動している
- 生きがいや目的がある
- ストレスが少ない
- 満腹を感じるまで食べない
- 野菜中心の食事
- 適量のお酒をたしなむ
- 社会的なグループの活動に参加する
- 宗教のグループに参加する
- 家族や親族とのつながりが深い