女性にとって不足しがちな「鉄」。鉄が不足すると、からだのさまざまな不調の原因になります。
この記事では特に40代からの女性の「鉄との付き合い方」を紹介します。女性に鉄が必要な理由や鉄不足の解決法、さらにサプリメントの上手な摂取方法についても解説します。
女性のからだに鉄が必要な理由は?
まずは、鉄の基本的な役割、鉄不足による症状とリスクについて解説します。
鉄の基本的な役割
鉄分は、人間の生命活動に欠かすことのできないミネラルです。主に血液中に含まれる赤血球の材料になり、全身に酸素を運搬するはたらきを担っています。
成人の体内には3~5gの鉄が含まれていて、このうち、約70%は赤血球のヘモグロビンや筋肉中のミオグロビンに、残りの約30%は肝臓、脾臓、骨髄などに「貯蔵鉄」として蓄えられています。
【参考】
e-ヘルスネット(厚生労働省)「鉄」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-022.html
鉄不足の症状とリスク
鉄分が不足すると、血中のヘモグロビンが足りなくなり、「鉄欠乏性貧血」という貧血になります。ヘモグロビンは酸素をからだ全体に運ぶ役割がありますが、ヘモグロビンが減少すると、からだが酸素不足になり、立ちくらみや頭痛のほか、息切れ、動悸、疲労感などの症状があらわれます。
女性にとっての鉄の重要性
女性は定期的に生理という形で出血が生じているので、男性よりも鉄分不足に陥りがちです。食生活の偏りや、無理なダイエットも鉄欠乏性貧血の原因になります。
鉄分不足が長期間続くと、美容の大敵である肌荒れや肌のハリの低下、カサつき、シミ・シワ、髪の抜け毛、切れ毛などの原因になることもあります。
鉄不足の解消方法
ここからは、鉄不足の具体的な解消方法について解説します。
鉄を多く含む食材を摂る
鉄はミネラルのなかでも吸収率が低いため、不足しやすい栄養素です。まずは鉄分が多く含まれる食品を日常的に摂取し、鉄不足に陥らないようにしましょう。
食品中に含まれる鉄分は、動物性食品に含まれる「ヘム鉄」と、植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」の2種類があります。それぞれが多く含まれている食品は以下の通りです。
ヘム鉄が多く含まれる食品
- 豚レバー
- 鶏レバー
- 赤貝
- 砂肝
- カツオ
- マグロ
非ヘム鉄が多く含まれる食品
- レンズ豆(ヒラ豆)
- 枝豆
- 納豆
- ヒジキ
- 小松菜
- 水菜
- ホウレン草
ひとつのものを食べ続けるよりも、なるべくさまざまな食材を摂取したほうが、ほかの栄養素もバランスよく摂取できます。
鉄の吸収を助ける栄養素
吸収されにくい鉄ですが、吸収を促進する栄養素を一緒に摂ることで、吸収率をアップすることができます。
たとえば、ビタミンCやクエン酸は鉄を吸収しやすい形に変えるはたらきを持つため、ビタミンCが多く含まれる緑黄色野菜や果物、クエン酸が多く含まれるレモンや、グレープフルーツなどの柑橘類、梅干しなどの食品を鉄とともに摂取しましょう。
【参考】
SPring-8「貧血予防に新たな指針 ~ ビタミンCが鉄分の吸収を促進するメカニズムを原子レベルで解明 ~(プレスリリース) —」
http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2018/180820/
また、タンパク質の摂取も吸収率を上げます。タンパク質は鶏ささみや豚ロースなどの肉類、イワシやスルメなどの魚介類、牛乳などの乳製品に多く含まれます。
これらの食品をうまく食卓にとり入れて、効率よく鉄を摂取しましょう。
サプリメントで鉄をとる際のポイント
サプリメントで鉄を摂取する際の、適切な摂取量とタイミング、そして副作用などについても紹介しましょう。
適切な摂取量とタイミング
鉄に限らず、サプリメントはあくまでも不足した栄養素を補うために摂取しましょう。サプリメントだけで必要な栄養素を摂取するのではなく、なによりも食事が中心で、サプリメントは補う程度に使用するのが本来の正しい使い方です。
サプリメントは分類としては加工食品であり、薬品と違って、明確な摂取タイミングや目安摂取量を記載することができません。
【参考】
「健康食品」の安全性・有効性情報「【第3回】サプリメントのパッケージの見方」
https://hfnet.nibiohn.go.jp/column/detail4760/
厚生労働省による、1日の鉄の推奨量は、18~69歳の男性の場合、「7.0~7.5mg/日」、18~69歳の女性(月経なし)の場合、「6.0~6.5mg/日」、18~69歳の女性(月経あり)の場合「10.5~11.0mg/日」です。
【参考】
厚生労働省「鉄の食事摂取基準(mg/ 日)1」
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4aq.pdf
H4)過剰に摂取した際の副作用
鉄を過剰摂取することで、便秘や胃部の不快感、腹痛、嘔吐、失神を起こすことがあります。
【参考】
健康長寿ネット「ミネラル成分の鉄分の働きと1日の摂取量」
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/mineral-tetsu.html
また、長期間の鉄の過剰摂取は「ヘモクロマトーシス (鉄過剰症)」を引き起こすこともあります。ヘモクロマトーシスは肝細胞に鉄が沈着、蓄積し、多臓器障害の原因になります。
【参考】
済生会「ヘモクロマトーシス (へもくろまとーしす)とは」
https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/hemochromatosis/
こんなときは医師に相談
鉄サプリメントは、医薬品との相互作用が生じる場合もあるので、持病がある人、定期的に薬を服用している人は、サプリメントの摂取前に必ず医師に相談してください。
【参考】
厚生労働省eJIM「鉄[サプリメント・ビタミン・ミネラル - 医療者]」
https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c03/07.html
また、便秘や胃部の不快感、そのほかの不調を感じた場合も、なるべく早く医療機関で診察を受けてください。
貧血を緩和するには漢方薬もおすすめ
体内のバランスを整えるには漢方薬もおすすめです。西洋薬やサプリメントは、足りない鉄分を直接補うのが基本ですが、漢方薬は心とからだのバランスを整えることで、根本の原因にアプローチし、貧血になりにくい体質をめざします。
また、漢方薬は、植物、鉱物といった自然由来の生薬をもとに作られていて、一般的には西洋薬よりも副作用リスクが低いといわれています。
貧血の改善には、「血液を巡らせ、からだ全体に酸素や栄養を運ぶ」「胃腸のはたらきをよくし、血液をつくる機能を回復する」「月経過多を緩和し、血液の排出を防ぐ」といった漢方薬を選びましょう。
貧血におすすめの漢方薬
加味帰脾湯(かみきひとう)
栄養や潤いをからだに補うことで貧血に働きかけます。
当帰芍薬散(とうきしゃきゅやくさん)
エネルギーや栄養を補うことで、貧血、冷え、月経異常に働きかけます。
漢方薬は、体質との相性が重要です。体質と合っていない漢方薬を使い続けても、本来の効果が出ないどころか、思わぬ副作用が起こる場合もあります。きちんと医師や薬剤師などの漢方薬のプロに相談しましょう。
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サプリメントを上手に活用し、鉄不足を解消しよう
鉄は、生理のある女性が不足しやすい栄養素です。鉄欠乏性貧血のほか、肌荒れの原因になる場合もあります。鉄が豊富に含まれる食事メニューを中心に、サプリメントで上手に補い、鉄不足を解消しましょう。