AEDをどう使うか
AED(自動体外式除細動器)を一般人が使えるようになって20年。市中には約67万台が設置されているが、実際にAEDの電気ショックが救命に利用されたのは4%程度。それ以上にAEDは現場に届いていたと予想されるが、全てのケースでAEDのメッセージに従って正しい操作ができていたのだろうか。
心停止した人の現場近くでAEDを見つけ、手元に届いたらどうすればいいのか。
まず電源を入れパットを装着する。するとAEDが心電図を解析し、電気ショックが適応か不適応かを判断してくれる。これもAEDの優れた特徴で、電気ショックが不要の場合は、胸骨圧迫を続けるという判断ができる。適応の場合は「ショックが必要です。ショックボタンを押してください」と音声メッセージが流れる。
AED使用時の要注意事項
ただ、一定時間ボタンを押さないと、内部放電を行い電気ショックができなくなる。その間は心電図解析が行われないのでロスタイムが生じてしまう。また装着し心電図解析中に、胸骨圧迫や体に触れてしまうと心電図が変化し誤判定が起きることがある。この2つは要注意だ。
救助者が使用したAEDの心電図の記録を解析した研究の報告書によると、心電図解析の約35%が救助者の行動が原因で誤判定が生じていた。また電気ショック適応の事象の約20%で、電気ショックが実施されていなかった。
救命時にパニックに陥らないには知識が必要
これは欧米の同様の調査と比較すると4.8倍で、要因として救命処置教育の頻度の少なさや使用されるAEDの機種の違いと推測される。
また、AED操作の回を重ねるごとに、救助者は落ち着きを取り戻し、AEDの音声メッセージ等に従い適正な処置ができる——と想像しがちだが、前出の報告書では、必ずしもそうではなかった。
理由は、「救助者は心拍再開が得られない事態によって心理的に圧迫され、絶え間ない胸骨圧迫に集中し、AEDが発する音声メッセージや画面メッセージに従うことができなくなった」と、救助者がパニック状態に陥ることを推測している。一般人が生死にかかわる場面でうろたえるのは当然で、こうしたとき落ち着いて動くには知識が必要だ。
学校で学ばなかった世代に学ぶ場所を
AEDの普及・啓蒙につとめてきた救命救急医の本間洋輔氏が指摘する。
「日本では救命処置の実施率が増えていません。一方、海外では救命率は勢いよく伸びている国もあります。世界的には学校教育に救命教育を入れるのはトレンドです。日本でも中・高校の保健体育で実技を伴う救命処置を学ぶように学習指導要綱が変わりましたが、学校で学んでこなかった世代が、知識を得るための場所が必要です」
クッションを用意して15分のトレーニングを
コロナ禍の時期に始めたオンライン講座は仕事、子育て、介護などで多忙な世代の参加が多く、現在は定期的に開催されている。公益財団法人日本AED財団では、スマートフォンがあれば無料で自己学習できる救命コーチングアプリ「Liv for All」(二次元コード参照)をリリースした。トレーニングはたったの15分で、必要なものはスマホのほかにクッションだけだ。救命救急について学ぶことができるので、ぜひ活用してほしい。
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いつでもどこでもスマホで学べる救命コーチングアプリ「Liv」