健康本 夏バテ

【ベストセラー健康本】『猛暑対策BOOK 日本のヤバい夏を最新科学の力で乗り切る!』

【ベストセラー健康本】『猛暑対策BOOK 日本のヤバい夏を最新科学の力で乗り切る!』
予防・健康
文字サイズ

殺人的な酷暑に対峙する「よりどころ」

 

殺人的な酷暑に対峙するための知的なよりどころとなる1冊を紹介しよう。『猛暑対策BOOK 日本のヤバい夏を最新科学の力で乗り切る!』(小学館刊、1430円)の著者、藤井直人氏は筑波大学体育系助教で運動生理学が専門。国際的な賞も複数受賞する著者が、「日本の夏はマジでヤバいよ!」との思いから警鐘を鳴らすために書き上げたという。

過酷な暑さを乗り越えられる「耐性」を身に着ける

編集担当の小学館出版局学芸編集室、竹下亜紀さんが出版の経緯を語る。

「藤井先生は、前著『ランナーのカラダのなか』で運動生理学をわかりやすく解説しました。その経験から専門分野である“暑熱順化”や体温調節を生かし、日本のヤバい夏を生き抜く知恵を集めた本も作れるのではないかと」

この本の柱である「暑熱順化」とは、1週間ほどのトレーニングによって体を暑さになじませて、過酷な暑さを乗り越えられる「耐性」を身に着けることを言う。

30分程度のトレーニングを無理せず行う

たとえば「基本的な暑熱順化」として本書が勧めるのが、30分程度のトレーニングだ。

暑熱下での、無理のない範囲でのウオーキングやサイクリング、あるいは風呂やサウナを利用しての暑熱順化も効果的。とはいえ熱中症になったのでは本末転倒なので、無理は絶対に禁物だ。

事前の対策以外に、実際に酷暑に襲われてからでもできる日常の対策も紹介されている。

暑さに慣れるための科学的アドバイス

〈朝起きたら体重を測って、通常時より体重が減った分の水分を補給する〉〈外出前のシャワーは水温を低めにして深部体温を下げておく〉〈汗はすぐに拭きとらずに、体の表面で蒸発させる〉など、まさに「科学的」なアドバイスが満載だ。

「うっとうしい存在でしかなかった汗が、じつは体温を下げる重要なアイテムだったり、入浴や運動次第で暑さに慣れることができるなど、この本を担当して初めて知ることが多く、勉強になりました」と竹下さん。続けてこう述べる。

熱中症を一歩手前で防ぐ

「『暑くてしんどい』と感じる人すべてに読んでほしい。熱中症になってから対策を考えるのではなく、その一歩手前で熱中症を防げる“ちょっとした策”が結構あることに気づかせてくれます。しかもすべて研究論文ベース。知っていれば誰かのお役にも立てられるし、ちょっと自慢できるかもしれません」

日本の酷暑は人の命を奪う恐ろしい存在になってきた。正しい知識を持つことで命拾いができる。

「暑熱順化」のメリットとデメリット

メリット

  • 体温が下がる
  • 心拍数が下がる
  • 汗がよく出る
  • 汗のナトリウム量が減る
  • 皮膚血流量が増える
  • 有酸素能力が向上する
  • 運動効率が上がる
  • 効果が持続する

デメリット

  • 脱水しやすくなる
  • 高温度時は効果が出にくい
執筆者
医療ジャーナリスト
竹中 秀二
学生時代から食品業界の専門紙でアルバイト原稿を執筆。大学卒業後は出版社に勤務し、児童向け書籍や学術誌の編集を担当。その後フリーとなり、新聞、雑誌で医療健康関連の取材を重ねる一方、医療や芸能関連書籍の企画・編集・取材・執筆を行う。