高齢になると便秘の男女差はなくなる
最近、おなかの調子がよくない—そんな悩みを持つ人は、ぜひ最後まで読んでほしい。
たとえば「便秘」。2022年に厚生労働省が行った「国民生活基礎調査」によると、60歳あたりから便秘に悩む人の数は急速に増え、若い世代では女性の比率が高かったのが、高齢になるほど男女の差がなくなることがわかっている。
理由として考えられるのは、食事量や水分摂取量の減少、腸内環境の悪化、自律神経の乱れ、感覚器官の機能や筋力の低下などだ。こうした悩みを抜本的に改善する対策を考えたのが『腸の名医が30年かけてたどり着いたお腹が弱い人のための30秒腸活』(アスコム刊、1540円)。著者は、“自律神経ブーム”の火付け役、順天堂大学医学部教授の小林弘幸医師=写真=である。
排便促し腸内フローラを活性化「腸もみ呼吸法」
この本で推奨する2つの核となる健康法が、「腸もみ呼吸法」と「全身のばし」だ。
腸もみ呼吸法は、両手を腰に当て、3秒吸って6秒吐く呼吸を数回繰り返すというもの。深くゆっくりとした呼吸によって自律神経が整い、腸をマッサージする作用があるという。「このマッサージの刺激によって蠕動運動と便の排出を促し、腸内フローラを活性化させる働きがある」と著者は言う。
自律神経を整わせ腸の働きを活性化「全身のばし」
一方の全身のばしは、両腕を上にのばし、1回あたり最低30秒程度、無理のない範囲で体を左右や前に倒す運動。背筋や腰がのびることでやはり自律神経が整い、腸の働きが活性化。筋肉がほぐれることで腸の蠕動運動が活発になるという。
たったこれだけの運動を毎朝、最低30秒間実践するだけで、便秘や下痢、膨満感などの「おなかの不調」を予防、改善に導いてくれるというのだから、試さない手はないだろう。
「続けることが何より大事」だという。体力や時間に余裕がある人は、これ以外の腸活を加えてもいい。しかし、それを加えることで「続かない」というのでは本末転倒だ。
習慣として長く続ける
「腸は習慣を大切にする臓器」と語る著者にとって、長く続けることこそが最重要事項なのであって、そのための根幹となるのがこの2つの運動法—ということだ。
「すぐお通じがあったなど、効果を実感できる人もいますが、頑固な便秘に悩んでいる人などは、最初のうちは効果を感じられないこともあるでしょう。ただ、乱れた自律神経のバランス、腸内環境が整うまではある程度時間がかかるといいますし、長く続けることが大切です」と語るのは、編集を担当したアスコムの栗田亘氏。
著者によると、腸は何歳からでも健康になれるそうだ。
「腸疲労」チェックリスト
- 便秘気味で排便が毎日ない
- 便が硬かったり下痢だったりする
- 便意を突然感じる。またはまったく感じない
- 排便後おなかに張りや残った感じがある
- 喉が渇かないと水は飲まない
- 食事時間が不規則、またはおなかが空いたら食べる
- 肉中心の食生活で発酵食品はあまり食べない
- 朝起きる時間がバラバラである
- 風呂はシャワーで済ませることが多い
- ほぼ歩かない日があり、運動不足を感じる
※「はい」が0~1個=とても元気、2~3個=ちょっとお疲れ、4~6個=お疲れ、7個以上=超お疲れ