関節の問題から起きる3症状
手指の不調は、関節の問題と、関節周囲の問題に分けられる。今回は関節に問題が起こり不調をきたしている「へバーデン結節」「ブシャール結節」「母指CM関節症」のセルフチェック方法や治療法などについて説明する。
骨のとげが第1関節にできる「ヘパーデン結節」
「へバーデン結節」は、指の先側の第1関節の軟骨が摩耗することで骨が変化し、骨の棘(とげ)ができるため、赤く腫れたり変形したりして痛む。
摩耗の原因は不明だが、指の使い過ぎや加齢、ホルモンバランスの変化などに影響を受けると考えられている。腫れた部分に触れると硬さを感じ、変形が進むと、関節がこぶのように盛り上がって(=結節)目立つようになる。また、皮膚が刺激されて指の甲側にミューカシスト(粘液嚢腫)という水ぶくれのような出っ張りができることもある。
第2関節に現れる「ブシャール結節」
同様の症状が指の第2関節に現れるのが「ブシャール結節」で、ヘバーデン結節よりも頻度は低いが痛みや動きの制限が強く現れる。
ところで、指の第2関節と付け根の関節に痛み・腫れがある場合は、「関節リウマチ」も疑われる。関節を包む滑膜が増殖したり、その周囲に関節液がたまったりすることで腫れが生じるため、ブヨブヨとしてやわらかいことがブシャール結節との違いだ。また関節リウマチでは、両側に症状が出ることが多いことも注意したい。
親指の付け根が痛む「母指CM関節症」
「母指CM関節症」は、手首に近い親指の付け根に症状が現れる。腫れたところを押すと痛みがあり、親指をねじるように動かすと強い痛みを感じる。ただし、親指の付け根の関節には、関節リウマチや腱鞘炎でも症状が現れることがある。
まずは患部を安静に保つ
慶應義塾大学医学部整形外科学教室上肢班の岩本卓士准教授は、治療についてこう説明する。
「いずれの病気も一定期間が過ぎれば、個人差はありますが痛みや腫れは治まることが多いです。痛み・腫れが強い急性期は手指を安静に保つようにし、動かすと痛い場合はテーピングや装具で固定します。そうして患部を安静にしつつ、痛みに対しては消炎鎮痛薬(NSAIDs)の内服薬や塗り薬、貼り薬を使用したり、関節内へのステロイド薬の注射を行ったりして、その患者さんの痛みがしっかりとれるような組み合わせを考えます」
更年期の入り口の女性は一時的なことも
診断はX線写真で行われ、関節の軟骨のすり減りや隙間の狭さ、骨の棘が確認されることなどで確定する。「50~60代以降の方に多く見られますが、40~50代前半の更年期の入り口くらいの年齢の女性で指の関節が痛い人は、X線で異常がないことがほとんどです。ホルモンバランスの変化による、一時的な炎症であることが考えられますが、その場合は様子を見ていると治ることが多いです」
手術の適応も
それでも痛みが治まらなかったり、関節が動かせず生活に支障をきたしたりする場合には、手術をすすめられることもある。ヘバーデン結節の場合は「関節固定術」を、ブシャール結節の場合は「人工指関節置換術」を実施するのが一般的だ。
母指CM関節症の場合は、「関節固定術」や「関節形成術」を行うことがある。動きはある程度制限されるものの、痛みはなくなり力が入りやすくなる。
【写真】
指の第1関節が変形して曲がってしまうヘパーデン結節