関節痛 見逃せない手の不調

見逃せない手の不調(1)~手の酷使と加齢にホルモンが加わり手の病気発症

見逃せない手の不調(1)~手の酷使と加齢にホルモンが加わり手の病気発症
病気・治療
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手の不調が心臓の不調と関連することも

手指の不調を抱えている人は意外と多く、放置している人も少なくない。しかし中には、生死に関わる心臓の不調と関連する症状もあることが最近わかってきた。そこで、手指の不調の治し方・ケア方法から、注意すべき手の症状について専門医に聞いた。

関節リウマチや痛風の怖れも

日常の動作に欠かせないのが、手指のなめらかな動きだ。しかしそこに関節炎や腱鞘炎(けんしょうえん)などが生じると、痛みやしびれが起こる。そして、ものをつまんだり、ドアノブを握ったり、ペットボトルやビンの蓋を開けたりするなどの日常の動作がしにくくなってしまう。

このような手指の症状は、何もしなくても治ることもあるが、鈍い痛みが続いたり、繰り返したりすることもしばしばだ。これらの症状が数日続くようなら、まずは整形外科を受診してほしい。手指の不調は、関節リウマチ(膠原病)や痛風、偽痛風などの病気であることも少なくないためだ。

整形外科で症状の確認を

「手指の不調がこれらの病気であるかどうか、これらの病気ではなくても治療が必要な状態かどうかを患者さんに知らせることが、僕たち整形外科医の仕事です」と話すのは、慶應義塾大学医学部整形外科学教室上肢班の岩本卓士准教授だ。

関節リウマチなどではないことがわかり、手指の治療が必要だと診断されたら適切に進めていくことになる。手指の不調はおおまかに、関節の問題(変形性関節症)と、関節周囲の問題(腱鞘炎など)に分けられる。

加齢と関係する変形性関節症の各症例

変形性関節症といえば、足の膝や股関節を思い浮かべる人も多いだろう。それと同様に指の関節の軟骨も、長年に渡る負担その他の原因ですり減ったりすることなどから、関節が変形して炎症を起こし、腫れたり痛んだりする。

指の関節症は、症状の出る関節によって「ヘバーデン結節」(親指以外の第1関節)、「ブシャール結節」(同第2関節)「母指CM関節症」(親指の付け根の関節)と呼ばれる。そして、親指以外の指の付け根の関節に異常がある場合は、関節リウマチが疑われる=図参照。

「指の変形性関節症は、中高年になると起きやすくなります。女性に多いのでホルモンバランスの変化と関係はあるのですが、完全に直結するわけではなく、どちらかというと加齢のほうが関係があります」

関節周囲の症状はホルモンバランスが影響

それに対して、関節周囲の問題、具体的には「腱鞘炎」、「ばね指」、「ドケルバン病」、「手根管症候群」などは、女性の場合はホルモンバランスの変化に影響されることが多いという。「更年期に多いのですが、妊娠出産期にもあります。そのため、腱の周りの問題は、関節の問題よりも若い方がなる傾向にあります。そしてその時期が過ぎると治ることも多いのです」

ちなみに、関節リウマチや痛風、偽痛風であることが整形外科受診によって判明した(あるいは疑いがある)場合は、適切な診療科を紹介されたり、そのまま整形外科で治療を開始したりすることが可能だ。そして連載4回目で詳しく説明する予定の「手根管症候群」の場合には、循環器内科と連携する必要があることも、頭の片隅に入れておいてほしい。

解説
慶應義塾大学医学部整形外科学准教授
岩本 卓士
2000年、慶應義塾大学医学部卒業。東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター整形外科助手などを経て、2012年、慶應義塾大学医学部整形外科学教室助教、講師を経て、2023年、准教授に就任。日本リウマチ学会評議員、日本手外科学会指導医など歴任。
執筆者
医療ジャーナリスト
石井 悦子
医療ライター、編集者。1991年、明治大学文学部卒業。ビジネス書・実用書系出版社編集部勤務を経てフリーランスに。「夕刊フジ」「週刊朝日」等で医療・健康系の記事を担当。多くの医師から指導を受け、現在に至る。新聞、週刊誌、ムック、単行本、ウェブでの執筆多数。興味のある分野は微生物・発酵。そのつながりで、趣味は腸活、ガーデニングの土作り、製パン。